アンデスの大地に刻まれるアース・アート 13

小高い丘のパワースポットから広大なパンパを地平線に向かって延びる放射線

~ ペルー ナスカの地上絵 ナチュラル・ミラドール ~

ナスカの地上絵を描くラインは、太陽の光によって焼け焦げた暗赤褐色の石を、表面から深さ数十センチ取り除くことによって引かれている。

古代ナスカの人々は、地球の表面に僅か数十センチの細工を加えることによって、数々のアート作品を創作した。

そのラインを身近で最もくっきりと見ることができるのが、ナチュラル・ミラドールだ。

ナスカのパンパのほぼ中心、マリア・ライヒェが建造した観測塔のミラドールの少し南に位置する。

 

写真(アンデス13-2)

 

ナチュラル・ミラドールは、人工による観測塔ではなく自然が作り出した丘だ。

地球の表面は、山、谷、海の起伏に富んでいる。

ところが、ナスカのパンパは見渡す限りに乾燥した大地が広がる。

そのパンパの中に数少ないながらも、小高い丘が平らな地表に僅かな高低差を加えている。

 

パンアメリカン・ハイウエイから少し離れたところにあるナチュラル・ミラドールには、丘に向かってラインが続く。

観光客用に整備された通路のようにも見えるが、観光客が次に訪れる観光客のために無意識の内に整備してあげた通り道とも言える。

ラインを歩く人々の靴が、地表の砂や石を撹拌することによって、通路の部分には酸化されない石や砂が露出することになるのだ。

丘の斜面にはさらにくっきりとしたラインが浮かび上がる。

人が足を踏み入れることがない部分は、太陽光を遮るものはなく酸化が加速し、ほとんど黒色に近い色合いとなる。

この地肌の丘を登る人々の足跡が、足形ではなくくっきりとした白色のラインとなったのだろう。

そしてこれが、ナスカの地上絵の正体なのだ。

古代ナスカの人々はこの現象に気づき、ナスカの大地に作画することを思い立ったのかもしれない。

これだけの明暗があれば、上空からでもラインをはっきりと見ることができるだろう。

順路の案内板などなくてもラインに従って進めば、いつの間にか頂上の観測地点に立つことになる。

 

写真(アンデス13-3)

 

丘の頂上からは、360度のパノラマで、ナスカのパンパが果てしなく広がる。

コンクリート建築の中で暮らす者にとっては、日頃生活では見ることができない光景だ。

人工の建造物はおろか、大地に根を張って育つ植物すら視界には入らない。

無味乾燥とした大地は、地球創世時の姿のようだ。

高台からの視線に収められる光景はシンプルなラインだけで構成される。

垂直の構図は、地平線で真二つに分けられる。

画面の上部には抜けるような青い色をした空が広がり、下部は地表が広がる。

瞳に映る画像は、構図的にも色彩的にも極めてシンプルだ。

ところが、丘を中心点とするように、ここからあらゆる方位に向かって、放射線が延びている。

広大な大地を延々と延びるラインは視界の上下を分割する空のラインと垂直に交わって姿を消す。

ナスカのパンパには、数々の図柄が描かれているが、ナチュラル・ミラドールからはそれらを確認することはできない。

ひたすら放射線が地平線に向かっているだけだ。

夥しい数のラインの中に、まだ解明されていない図柄がきっと隠されていることだろう。

ナチュラル・ミラドールは、自然の観測塔となっているが、超人的なパワーが漲っているようにも感じられる。

高低差は数十メートルとはいえ、それだけ天に近づいているわけだ。

無限の大地を見渡せる丘に、古代ナスカの人々にも象徴的な役割を見出した。

丘では宗教的な儀式が開催された。

天に向かって生け贄を捧げたこともあるという。

ナスカのパンパを一望できる小高い丘は、古代からパワースポットであり続けているのだ。

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