ガラパゴスのアニマル・アート/ネイチャー・アート 14

細やかな配色が支える夜行性の習性

~ ガラパゴス サウス・プラザ島 アカメカモメ 2 ~

アカメカモメは、真赤なアイリングをトレードマークとするガラパゴス固有のカモメだ。

ふくよかな真白な腹部にグレイのツバサ、黒色の燕尾がバランスのよい体形を作り上げ、じっとしていると置物のように見える。

 

アカメカモメは生後約5年で、一人前の成鳥となる。

つがいとなった2羽の親鳥は、毎年9ケ月の周期で繁殖する。

他のカモメの仲間は、ほとんど複数個の卵を産むのに対して、アカメカモメは1個しか卵を産まない。

ガラパゴス諸島には、天敵と呼ばれるような捕食者がいないため、1個の卵で充分に子孫を残せるのだ。

ところが、アカメカモメの腹部にも、他の種類と同じように、卵を暖めるために血管が集まった抱卵班と呼ばれる器官が2つ残っている。

これは、アカメカモメもかつては2個の卵を抱いていたことを物語っている。

巣は海抜10メートル足らずの海岸沿いの岩肌に作られる。

溶岩の小片やサンゴの骨格、ウニの棘などで覆い、卵が転がるのを防いでいる。

貴重な卵は親鳥によって暖められ続け、約1ケ月で孵化する。

産まれたばかりのヒナ鳥は真白な羽毛で覆われている。

その後、ヒナ鳥が空を飛べるようになるまでの2ケ月から3ケ月の期間は、親鳥がエサを与える。

 

アカメカモメは、カモメの仲間では唯一、夜行性の鳥だ。

太陽が西の海に沈む黄昏どきになると、大きな鳴き声をあげながらコロニーを飛び立つ。

眼の裏側に輝板を備え、網膜を通る光を反射することによって受光感度を上げ、暗い夜でも海の上を飛び回ることができる。

そうは言っても、暗い夜空から海の中の獲物を見つけ出すのは至難の業だろう。

大好物のイカは、イカが皮膚から発する僅かの蛍光をたよりとする。

魚の群れは、プランクトンが出す蛍光をたよりとする。

人間では気づかないような僅かな光を探り当て、暗闇の中で獲物を見つけ出しているのだ。

視覚的には間違いなく不利であるはずの夜の漁ではあるが、日中の漁より有利となることが一つある。

日中に漁をするとガラパゴスで一緒に暮らすグンカンドリに、折角捕えた獲物を略奪される危険がある。

実際に島々では、グンカンドリに獲物を奪われたカツオドリの姿をしばしば見かける。

カツオドリよりもひ弱に見えるアカメカモメが、イカや魚を口にくわえていれば、グンカンドリの格好の標的となってしまうことだろう。

夜行性という習性は、アカメカモメがガラパゴスの生活環境で、他の種と競い合うことなく共存しながら生きるために身につけた手段なのかもしれない。

闇夜の中の漁で収穫したエサは、巣で待つヒナ鳥の元に届けられる。

ところが、夜はエサが見つけにくいばかりでなく、ヒナ鳥の姿も見つけにくい。ここで大きな役割を果たすのがヒナ鳥の真白な羽毛だ。

暗い夜中でも真白な羽毛は目立つため、親鳥がヒナ鳥を見つけやすくしている。

白色の羽毛をたよりに親鳥はヒナ鳥の傍らに寄り添い、クチバシをヒナ鳥に差し出す。

ヒナ鳥が親鳥からエサを受取る際には、今度は親鳥のクチバシの色が効果を発揮する。

親鳥のクチバシの先は白色となっており、この色をたよりにヒナ鳥は親鳥からエサを受取るのだ。

厳しい生活環境で生きる生物は、自分の生命を守るための色彩を身につけている。

天敵から身を隠すための配色をしている動物も数多くいる。

ところが、アカメカモメの体色は、夜行性という特殊な習性を支える役割を果たしているのだ。

一見、人間顔負けのオシャレセンスをもっているようにも見えるが、実は生存するために不可欠の色彩を体中に点在させているわけだ。

 

写真(ガラパゴス14-2)

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