アンデスの大地に刻まれるアース・アート 14

縦横40キロ、50キロのキャンバスに描かれるレリーフ

~ ペルー ナスカの地上絵 技法の推定 ~

古くから画家達、真白なキャンバスに絵具で色彩をつけることによって絵画を描いてきた。

油性の絵具を用いれば油絵、膠絵具を用いれば日本画となる。

何色もの油絵具を塗り重ねるとキャンバスの表面には凹凸ができあがる。

遠くからは平面に見える絵画を間近で見ると、絵具の起伏に画家達の創意工夫が漲っている。

一般的に画家達はアトリエなどの室内で絵画を描くため、キャンバスの大きさは部屋の中に収まるサイズだ。

工業製品が生活を支える現在では、アーティストの独創的な創作は、決められた規格の上に実現されるわけだ。

ところが、古代ナスカの人々は途轍もないものをキャンバスとして利用した。

地球の誕生によって形成されて以来の地平だ。

 

南アメリカ大陸のアンデスの麓に広がる東西40キロ、南北50キロにも及ぶパンパに、地球規模のアート作品を描いた。

2000平方キロメートルの広大な面積のパンパの表面の土砂は、熱帯の厳しい太陽の光によって酸化し褐色に変色する。

褐色の土砂を取り除くと酸化前の白色の土壌が表れる。

深さ数十センチ、地表を削り取れば黒白の濃淡のコントラストが地表に形成される。

近代絵画の画法とは逆の手法、レリーフやエッチングと類似する方法で古代の人々は地表に作画したのだ。

巨大なキャンバスに描く図形は、数十メートルから数百メートルにも及ぶ。

延々と引かれた直線は定規を当てたように一直線であり、曲線はコンパスを使って描いたような円形で描かれる。

近代的な用具のなかった時代に、地球規模のサイズで正確に図形が描かれたことには謎に包まれている。

 

写真(アンデス14-2)

 

古代ナスカのアーティストは、どのようにして作画を行ったのだろうか。

数多くの研究者がナスカのパンパを歩き、作画法の調査を行っている。

現在では3つの説が考えられている。

最も広く知られているのが、「拡大法」と呼ばれる手法だ。

先ず、子どもが砂場に絵を描くように小さな下絵を描く。

そしてこの原画の傍らに中心点を設置し、そこに杭を打つ。

杭にロープを結びつけ、下絵の延長戦上にこのロープを引っ張る。

中心点を起点として放射状に下絵の各点が拡大される。

中学校で学習した相似の理論が巧みに利用されているわけだ。

この方法であれば用具が揃わない時代であっても、ロープと杭さえあれば、100メートルにも及ぶハチドリの地上絵を、半日あれば描くことができるという。

しかし、この方法の確証となる下絵は発見されていない。

2008年にナスカに訪れた山形大学の坂井正人教授は、2003年に近くに住む二人の女性が描いたキリスト教の聖母の像に注目した。

ナスカの農夫が畑に種をまくときには複数の人が横一列になって足並を揃えて前に進む。

二人の女性は頭の中に描こうとする図形をイメージし、互いの距離を目測しながら片足を引きずってラインを引いたのだと言う。

日常の生活で培った農法を利用してアート作品を創作したと推定したのだ。

また、アメリカのコルゲート大学教授、アンソニー・F・アヴェニは、幾つかの地上絵のラインの中に、等間隔で石が積み上げられていることに気づいた。

基準点からロープを引っ張り、ロープに沿って人間が両手を広げた長さに石を積む。

この石をたよりに地表の石を取り除けば、容易にまっすぐなラインを引くことができる。

どの技法でもパンパをキャンバスとした作品を作成することが可能と考えられるが、全ての人を納得させるだけの証が残っていない。

今後も数多くの研究者が、ナゾの解明に向けてナスカのパンパを歩き回ることだろう。

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