食のグローバリゼーション 64

米粉をシート状にしたライスペーパーで包む彩り豊かなサラダ

~ ヴェトナム料理 ゴイ・クオン 生春巻き ~

温帯に属する日本には、春夏秋冬の四季が一年の周期で訪れる。

各々の季節には、その時期ならではの海の幸、山の幸がある。

旬の食材を活かした料理がテーブルに並べば、食卓には自然と季節感が漲る。

味覚によって季節感を感じとることが、日本の食文化の特徴と言うことができるだろう。

飲食店では季節ごとにメニューを書き改める。

暑い夏にしかメニューに登場しない料理もあれば、寒い冬にしか味わえない料理もある。

ところが、春巻きは料理名の中に季節を表す文字をもちながら、一年を通して食べられる料理だ。

日本の伝統料理ではなく、アジアから海を渡ってきたメニューだ。

 

春巻きは、同じような素材を使いながらも、中国では揚げ春巻き、ヴェトナムでは生春巻きが、各々の国の代表料理となっている。

日本では調理方法の違いを表しながらも春巻きで統一されているが、英語に訳すと揚げ春巻きは「スプリング・ロール」、生春巻きは「サマー・ロール」となるようだ。

生か揚げるかの調理方法の違いによって、季節が変化するわけだ。

日本でもヴェトナム料理店、中華料理店ばかりでなく、和食店でも生春巻きをメニューに加えているところは多い。

この生春巻きは、本国のヴェトナムでは、「ゴイ・クオン」と呼ばれている。

これを直訳すると、「包みサラダ」となる。

これに対して、揚げ春巻きは「チャーズォー」と呼ばれている。

「ゴイ・クオン」は、ライス・ヌードルを使った「フォー」とともに、ヴェトナムの米粉による食文化を象徴する料理だ。

サラダを包む材料として、米粉を原料とした薄いシート状のライスペーパーを用いる。

細かく砕いた米に水を加え乳液状にした後に、布の上に丸く広げ熱水蒸気によって蒸してから乾燥し保存する。

水気のない米粉のシートは保存がきくばかりでなく、軽く水で戻すだけで、柔らかな食感をもつ食材に変化する。

具材となるサラダには、レタス、ニラ、コリアンダー、ニンジン、もやしなどの野菜の他に、茹でたエビや、肉、ビーフンなどが使われる。

具材に工夫を凝らしてバランスよく選択すれば、バラエティー豊富な「ゴイ・クオン」のレシピができあがる。

ロール状に完成した春巻きは、薄くて透明なライスペーパーを通して、具材の色彩が透かして見える。

豊かな彩りを眺めていると、自然に食欲がそそられてくる。

日本のヴェトナム料理店では、生春巻きにはヴェトナムの魚醤のヌックマムが添えられることが多いが、ヴェトナムの現地で人気があるのは味噌ダレだ。

特にピーナッツの味噌ダレが好評のようだ。

「ゴイ・クオン」は、揚げ春巻きと比較すると、さっぱりとした味わいとなっていることが多いので、味噌ダレでコクを補いアクセントをつけているのだ。

ピーナッツの味噌ダレは、味噌の塩味に加えて、トウガラシの辛さ、砂糖の甘さ、ピーナッツのコクが、複雑に絡みながら包みサラダの味を引き立てる。

味噌ダレの他にも、ヌクチャムと呼ばれるタレが添えられることもある。

ヌクチャムは、魚醤のヌックマムに砂糖や、ライムやレモンの搾り汁、酢、トウガラシ、ニンニク、水を加えたヴェトナムならではのソースだ。

ヌクチャムは、「ゴイ・クオン」ばかりではなく、全ての料理の味を引き立てることができる、甘酸っぱい万能ソースだ。

現地では、各々の料理に合わせて素材の種類や配合の割合を微妙に変えている。

ヴェトナムでは料理のレシピばかりではなく、タレやソースにも様々な食材の特徴を巧みに溶け合わせることによって、繊細な食文化を作っていると言えそうだ。

 

写真(食64-2)

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