ガラパゴスのアニマル・アート/ネイチャー・アート 16

体格の違う子ども達が母親を囲んでねだる栄養たっぷりの母乳

~ ガラパゴス サウス・プラザ島 ガラパゴス・アシカ ~

ガラパゴスの島々の海岸沿いの岩場には、約5万頭のガラパゴス・アシカが暮らしている。

太陽の陽射しを浴びながら昼寝をする巨体のアシカのまわりには、育ち盛りの小さな子ども達が歩き回っている。

数十メートルの間隔で作られるハーレムは、一頭のオスを中心として数十頭のメスや子どもが、ファミリーのような集団を作って暮らしている。

 

メスは一年に一度、乾燥した涼しい時期に一頭の赤ちゃんを出産する。

島々の気候によって出産の時期に微妙なズレがあり、西の島から南の島に向かって繁殖が始まっていくようだ。

ノース・セイモア島でアシカの出産が見られた暫く後には、サウス・プラザ島でも同じような光景が見られるようになる。

約9ケ月の間、メスのお腹の中で育てられた赤ちゃんは、頭を先にして一瞬の内に下界に出てくる。

元気な赤ちゃんの出産を終えたメスは、数十分後にはお腹の中でわが子を大切に包み続けた羊膜などの後産を排出する。

この羊膜を大好物とする生物が、島の中にたくさん住んでいる。

 

アシカが出産を始めると、どこからともなく、ノスリやマネシツグミ、グンカンドリ、カモメなどの鳥たちが次から次に集まってくる。

続々と母親アシカの周りに訪れる生き物達は出産を助けるためではなく、出産の後に母体から排出される羊膜が目当てなのだ。

種族保存のための重要な仕事を終えたメスがその場を立ち去るやいなや、出産の跡地は様々な種類の生物の争奪戦の戦場となるわけだ。

母親の体内でアシカの赤ちゃんを守り続けた羊膜は、本来の目的を達成した後に、今度は別の種類の生物の栄養素となる。

自然界でもリサイクルが行われ、ガラパゴスの島々に生息する生物たちは、種別を超え持ちつ持たれつの関係を築き上げていることになる。

見事な共存共栄の社会が形成されているわけだ。

 

子どもを産み落とした母親は、数日間は産まれたばかりの赤ちゃんに寄り添って暮らす。

ところが、子どもの声や匂いを覚えると、すぐに海へ漁に出かけて行ってしまう。

岩場に置き去りされてしまった赤ちゃんは、赤ちゃん同士でグループを作る。

同世代のアシカ同士はすぐに仲良しになり、好奇心たっぷりに波打ち際や岩場をよちよちと歩き回る。

海の中を泳ぎまわる小さな魚をはじめ、イワガニ、ウミイグアナばかりではなく、海面に浮く木切れや海藻までが、子ども達の遊び相手となる。

人間を恐れることがないため、海岸線を歩いていると突然足元に姿を表してくるため要注意だ。

海に出かけた母親は無論、子どもを見放したわけではなく、漁から帰れば暗闇の中でも間違えることなく自分の子どもを見つけ出し栄養たっぷりの濃い母乳を、子どもがねだるのをやめるまで与え続ける。

授乳期間はとても長く、3年に及ぶ場合もある。

そのため、体格の違う子ども達が一頭のメスを囲んでいる光景をしばしば見かけることができる。

ハーレムの各所で親子兄弟が仲睦まじく暮らしているのだ。

子ども達の最初の毛変わりは生後1ケ月頃から始まり、幼毛から黒い毛に生え変わっていく。

次の毛変わりが起こる5ケ月後になると、自分の力で漁を始めるようになる。

とは言っても親のようにうまく漁をすることができず、母乳や母親が捕獲したエサをたよりとする生活が続く。

母親に寄り添って暮らし、約5年で一人前に成長する。

成熟したアシカは、大きな波をもろともせずに海の中を泳ぎまわり、自分のエサは自らの力で捉えるようになる。

そして、今度は自分が次の世代を育てるようになるわけだ。

 

写真(ガラパゴス16-2)

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る