アジアの遺跡に見る時空を超えたアート 74

頑丈な岩壁が自然のエアーコンディションの役割を果たす岩石住居

~ トルコ カッパドキア 岩石遺跡群 2 ~

トルコ中央のアナトリア高原に位置するカッパドキアには、360度のパノラマで地球上の光景とは思えないような奇岩群が広がる。

如何なるアーティストによっても創作できない巨大な地球のアートだ。

大地深くに根をはる樹木の姿は見られるものの地表に緑色の潤いを与える草花を見出すことなど困難な空間に、特異な形状の岩がにょきにょきとせり出している。

緑と水に乏しい土地は、人間が住みつくことを拒否しているかのように見える。

ところが、岩の一つ一つに注意深く目をやると、数多くの岩の側面に窓のような穴が開けられていることに気づく。

さらに目を凝らすと、訪れた人を迎え入れるような玄関が施されていることが見出される。

とんがり帽子のような形をした岩は、一人一人の人間の頭部を覆う帽子ではなく、家族が生活を営む住宅なのだ。

生物が生存する上でなくてはならない水の在りかを見つけ出すことができない乾ききった地方にも、人間の生活の営みが存在するのだ。

各々の岩が人々の住宅であることに気づくと、真白な岩肌が硬い岩石によるものではなく、ふくよかな綿ででもできているような錯覚に襲われてくる。

 

写真(遺跡74-2)

 

カッパドキアはローマ帝国の時代には、キリスト教の聖地として栄えた。

ところが、周辺の地域でキリスト教が迫害されるようになると、教徒たちはカッパドキアに逃れて隠遁生活をするようになったのだ。

周辺に聳える火山のエルジェイス山ハサン山から噴き出した溶岩が固まってできた岩石は、多孔質であるため比較的加工がしやすく、容易に窓をあけたり、内部をくりぬいたりすることができる。

人々が村落を形成しているとは思ないようなエリアの岩場の住居は、格好の隠れ家となったのだ。

頑丈な岩が外敵からの防御の役割を果たす。

異教徒たちが侵入してくれば、扉を固く閉ざして岩の中でひっそりとする。

如何に鋭い刃を岩に突き立てようとも、岩盤をくりぬくことなどできないばかりでなく、逆に刃先が粉々に砕け散ってしまうことだろう。

外敵が諦めて立ち去った後に、岩の中の空間から外に出て、お互いの無事を喜び合ったに違いない。

溶岩を利用して作られた住居は、外敵の侵入から家族の命を守るばかりではなく、岩壁が外気の暑さ寒さを遮断し、天然のエアーコンディションの役割を果たした。

夏季の厳しい太陽の陽射しを白色の岩石が100パーセント反射し、室内は快適な温度に保たれる。

冬季の乾いた乾気も内部に影響を与えることはなく、暖かな室温を提供してくれる。

電源スイッチをオンオフする必要のない、自然のエアーコンディションを完備しているというわけだ。

地球が自らの地殻活動で生み出した自然の造形物を、このエリアで暮らしてきた人々は巧みに利用してきたのだ。

快適な住居環境が準備されているエリアなのだが、家の周囲には川も池も見当たらない。

どこかで地下水でも汲み上げているのだろうか。

何とか水を確保できたとしても、奇岩が果てしなく林立するエリアには、田畑にできるような農耕地が見当たらない。

このエリアの特産品はブドウだと聞く。

ブドウは乾燥に強い樹なのだ。

カッパドキアでは古くから、ワインの醸造が盛んに行われてきた。

でもブドウだけでは、人間は生きてはいけないだろう。

岩盤の切れ目のわずかな土壌をうまく活用して穀物や野菜を栽培してきたのだろう。

この過酷な土地に住んでいた人々は、他の生活しやすい地方に移り住んでいるのだが、今でも数少ないながらもこの地に留まり、伝統的な生活を営んでいる人がいるようだ。

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