アンデスの大地に刻まれるアース・アート 16

急旋回を繰り返すセスナ機から眺める大地に描かれたアート作品

~ ペルー ナスカの地上絵 遊覧フライト ~

古代ナスカのアーティスト達は、アンデス山脈の西の麓、ナスカ川とインヘニオ川に囲まれる乾燥しきった大地に、数々の幾何学図形を描いた。

動物や植物の図柄が、東西40キロ、南北50キロにも及ぶ広大な地球の表面に描かれている。

全てのアート作品を地上で見ようとすると、熱帯の厳しい陽射しの下、数十キロも歩かなければならない。

それには、途轍もない体力が必要となることであろう。

どこかの高台か上空から鑑賞しようとするのが常識的だろう。

現在ではグローバル化が進み、地球の上空には夥しい数の飛行機が運行している。

今この瞬間にも地球の上空を飛ぶ飛行機の数も、数えきれないだろう。

高度約1万メートルを飛ぶジェット機からでも、目を凝らして見れば、きっと地上絵を確認することができるに違いない。

一つ一つの地上絵は数十メートルの規模で描かれてはいるが、距離が離れれば視界に捉えられる図柄のサイズは小さくなってしまう。

それに、高速で飛行するジェット機で通り過ぎると瞬時の出来事となり、ゆっくりとアート作品を鑑賞できるものではない。

大地に描かれたアート作品は、適切な高さの上空から見たいものだ。

 

写真(アンデス16-2)

 

ナスカでは地上絵の上を飛ぶフライトが準備されている。

遊覧フライトを運航する航空会社は数社あり、ナスカ郊外の空港から地上絵が描かれる大地の上空をセスナ機で飛ぶことができる。

機体の種類を大別すると2種類で、小型機は4人乗り、中型機は12人乗りとだ。

いずれのセスナ機も、地上100メートルから500メートルの高度を飛行する。

数百メートルからだと、地上絵をしっかりと視界に捉えることができる。

しかも地上絵の真上に来ると見やすくなるよう、機体を少し傾けてくれる。

機体の右側に座った人に見せるため機体を少し右に傾けた状態で地上絵の上空を通り過ぎる。

一つの地上絵を見ることができる時間は、各々数十秒程度だ。

この瞬間は窓から真下を食い入るように眺めることとなる。

機体を右に傾けた状態で水平飛行した後は、今度は左側に座っている人に地上絵を見せるため、機体を左に傾ける。

どの座席に座った人にも平等に地上絵を鑑賞できるように配慮してくれているわけだ。

それは有難いことに違いないが、実現するためにはセスナ機を急旋回させなければならない。

機体を傾けながら進行方向を180度バックさせるわけだ。

両足を踏ん張りながら手で機内のどこかをしっかりと掴んでいないと、機体の外に放り出されそうになる。

何と、真青な空は座席の下に見える。

どのような飛行機でも、お尻の下に青空が広がるなどということはないだろう。

地上絵の上に来る度に、このサイクルが繰り返される。

乗物酔いをする人には、耐えることができないフライトかもしれない。

地上絵を鑑賞した後は、できるだけ遠くの風景を眺めるか、揺れないパイロットの背中に焦点を合わせるかしないと、途端に目が回ってしまう。

日本の遊園地には様々な絶叫マシンが設けられて、ナスカの遊覧フライトにはアート作品の鑑賞に加えて、絶叫マシンの体験が無条件で付加されている。

セスナ機に乗り込む前には少なからず不安感に襲われるが、機体から降りるときには満足感で満たされることになる。

ナスカでは、セスナ機フライトは外せない体験と言えるだろう。

空港を飛び立ったセスナ機の大半は、クジラ、三角形、フクロウ人間、サル、キツネ、海鳥、クモ、ハチドリ、サギ、トンボ、手、海草、トカゲの順に13の地上絵の上空を飛び、約30分で空港に戻ってくる。

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