“日本の現代美術の大きな動向である「もの派」を理論的に主導したことで有名”。
こんな書き出しで紹介される、現代美術界の重要人物が李禹煥(リ・ウーファン)です。
なんと、この李禹煥の個展が、広尾にある「カイカイキキギャラリー」で開催されているという事で話題となっています。
アート好きな方であれば、なんとなく一度は聞いた事があるかもしれまない名前だと思いますが、オーナーの現代アーティスト・村上隆悲願の個展ということで、今回は気合いが入っているようですね。
この“もの派”というグループで活躍していた李禹煥なのですが、そもそも“もの派”ってなんだろう…と、いうところから始めないと訳が分からないかもしれませんね。
1960年代の末から始っている日本美術界の大きな動向が“もの派”。
石や木、紙、綿、鉄板など様々な素材を組み合わせたり、単体で作品とする美術様式として知られています。
その当時、前衛美術がとにかく主流であった反芸術的傾向に反し、還元から芸術の再創造を目指したものということです。
現代美術でありながらも、伝統的な部分はしっかりと残しておき、行き過ぎない…伝統を無視したアバンギャルドを良いとす風潮に釘を打つような、そんな活動だったのでしょうか。
そして、このもの派を定義づけたのが、リーウーファンという事です。
1968年に関根伸夫が発表した“位相―大地”を発表。
李禹煥がそれを新たな視点で評価して、そこに理論づけたことから、もの派が始ったという事ですね。
この美術様式の、まぁ生みの親というか発起人としても活躍を続けて行った訳です。
この二人が打ち出した新しい美術に賛同する後輩達による作品が次々とこの時期に発表されつづけ、結果的に一大旋風を巻き起こしたカタチとなった訳です。
「李+多摩美系」「日藝系」などと呼ばれるアーティスト達が参加し、とにかく賞賛と批判を浴びまくった、結果的に先鋭的な美術運動であった事が“もの派”の印象を強くしたのです。
と、いうことで、日本の現代美術界を大きく変化させた張本人でもある、ビッグアーティストの個展という事で、これはちょっといてもたってもいられない!って、方もいるかもしれません。
国内はもとより、世界的に高い評価を獲得しているリーウーファン自体、他に類を見ない唯一無二の作品作りを現在も続けているとのことです。
鎌倉を拠点にしながら、パリを行き来しており、常に作品を生み出し続けているという、根っからのアーティスト生活を送っています。
安藤忠夫と手を組んで作った香川県直島に「李禹煥美術館」なども、建築の分野でも注目されています。
また、NYグッゲンハイム美術館での個展に、ヴェルサイユ宮殿での特別展など、その勢いは止まるところを知りません。
今回の、カイカイキキギャラリーでは特別に2つのインスタレーションが出品されているようです。
石や砂、キャンヴァス等の素材にほとんど手を加えることなく構成するという“もの派”ならでは作品を通じて、考古学的な空間にギャラリーを再構築しています。
「常に周囲の環境との関係を探求してきた」と、語っている事もあり、もの派が自然と共存しながらも、そこに様々な感情が交錯する文学的なアートである事が分かります。
なかなか、その目でリーウーファンの作品を間近で見る機会も無いですし、特別な最新インスタレーションが見る事ができるのも、カイカイキキギャラリーならではでしょう。
是非、このチャンスを逃さぬよう、じっくりとチェックしてきましょう!