食のグローバリゼーション 69

沖縄の歴史と文化が凝縮するご当地ラーメン

 日本料理 沖縄 沖縄そば ~

郷里が異なる人が集うと、各々の郷土を自慢し合うことがしばしばある。

歴史や習慣に関する話題に留まらず、地域ならではの味覚など、テーマの幅は多種多様だ。

ついつい熱っぽく郷土自慢をしてしまうことだってあるだろう。

北は北海道から南は沖縄まで、日本国中で食べられるラーメンには、ご当地ラーメンと呼ばれるものが数多くある。

札幌ラーメン、喜多方ラーメン、博多ラーメンなどはその代表格だが、他にも指折り数えればきりがない。

どのご当地ラーメンも、各々の地域の食文化を色濃く反映している。

 

その中にあって、沖縄そばは別格の存在と言えるかもしれない。

味覚的にも視覚的にも、他のご当地ラーメンとは似ても似つかない特徴をもったラーメンだ。

麺の素材には100%小麦粉を用い、アルカリ塩系の溶液で麺を打つことは、他のラーメンと同じだ。

アルカリ塩系の溶液として用いる鹹水として、亜熱帯地域に育つガジュマルの薪を燃やして作った灰汁を使うこともあるが、基本的な麺の製法は一般的なラーメンと変わらない。

唯一異なるのが最終工程だ。

沖縄そばでは、ゆで上げた麺を油で覆い、冷水で締めるのではなく外気によってゆっくりと空冷する。

油を吸った麺は保存性が向上する。

真夏の暑さが厳しい南国では、格好の保存食となる。

このため、麺の表面は固めで、ボソボソとした食感をもっている。

麺の種類の点から見れば、中華そばに分類される沖縄そばだが、これにスープと具材を加えると、一般的なラーメンとは大きくことなる麺料理ができあがる。

スープは、豚とカツオから出汁がとられ、あっさりとした和テイストの風味となる。

太めの麺が、スープに浮かぶ様子は、そばというより、どちらかというとうどんに近くなる。

色合いも、ラーメンの濃厚な色とはまるで違う薄い色をしている。

そばの上に盛られる具材も特徴的だ。

最も一般的なものは、三枚肉、かまぼこ、ネギ、紅ショウガなどだ。

当初は豚の赤肉とネギのみのシンプルなものだったが、今では豚のあばら肉を甘辛く煮付けた「ソーキ」や、軟骨、沖縄特産のヨモギ「フーチバー」など、バラエティーに富んだ具材が使われるようになってきている。

1970年代になって登場した「ソーキそば」は、沖縄そばの定番メニューと言える存在だ。

 

沖縄そばのルーツを探ると、琉球王朝時代の14世紀から15世紀あたりまで辿ることができるようだ。

地理的環境から中国と盛んに交易した沖縄には、大陸の様々な文化が伝わった。

ただ目新しい外来の料理は一般庶民の口には届かず、宮廷料理のメニューに加わるに留まってしまった。

この宮廷料理が一般市民にまで広まったのは、明治時代の後半になるようだ。

那覇市に移り住んだ中国人が、支那そば屋を開店したのが始まりだと言われている。

大正時代に入ると店舗数が次第に増加し、街角で誰もが気軽に食べられるようになったのだ。

ところが、第二次世界大戦では島々が激しい戦線に晒され、飲食店はおろか民家すら完全に破壊しつくされた。

雨を凌ぐ屋根、日々の食料が不足する中、アメリカ軍が小麦を配給するようになり、島内にそば屋が復活した。

戦争によって夫に先立たれた未亡人が、そば屋を開店したケースも多いという。

これによって、沖縄そばが島内に急速に普及し、現在では県内では1日に、何と15万食以上も消費されているという。

郷土料理は各々の土地の風土、気候に加えて、地元の特産物が絡み合うことによって改良が繰り返される。

沖縄そばは、料理の一つのメニューであるだけではなく、歴史と文化が凝縮されているのだ。

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