アジアの遺跡に見る時空を超えたアート 77

アジアの遺跡に見る時空を超えたアート 77

乾燥しきった渓谷に象徴的な姿を見せる砂漠の舟

~ トルコ カッパドキア 岩石遺跡群/デヴレント渓谷 ~

 

トルコのアナトリア高原に位置するカッパドキアには、

南北約50キロ、東西約30キロにわたって、エリアごとに多種多様の奇岩が地表からせり出し、

地球上の光景とは思えないような特異な景観を作り上げている。

中心集落のギョレメの東方の町、ユルギュップの約4キロ北には起伏に富んだ渓谷が広がる。

デヴレント渓谷の地表からは千差万別の岩石が顔を覗かせている。

渓谷全体に極めて個性的な景観が広がることから、「イマジネーションの谷」と称されている。

写真(遺跡77-1).JPG を表示しています

地表を覆う真白な石灰華は、凝灰岩が砕けて粉末状になったものだ。

凝灰岩は溶岩が冷えて固まった岩でありながら、柔らかく風や雨によって容易に浸食される。

地球の気象変化が岩を砕き1000メートルを超える高原地帯に、まるで海岸線の砂浜のような土壌が作られたのだ。

白色の土壌は清潔感ばかりでなく、微かな風でも石灰の華が舞い上がりそうな軽やかさを漂わせる。

 

砂場のような平らな地面が広がれば、遠くに地平線が見えるだろうが、

デヴレント渓谷の表面には平坦な部分はなく、一面に凹凸が刻まれる。

周囲の火山から噴出した溶岩が、次から次に堆積したのだ。

石灰華の土壌に、色彩も形状も異なるオブジェが、数限りなく並べられたようだ。

 

溶岩には年輪が刻まれる。

木の幹に描かれた同士円状のものではなく、垂直方向に境界線が重ねられる。

下から白色、赤褐色、黒色褐色、そして黒色の配色が施された。

上方にいくに従って色調が濃くなると、色彩のもつ重量感によって造形物は不安定になるようにも思えるのだが、

デヴレント渓谷の岩石によるオブジェは、上層にエネルギーが滾っているかのように見える。

 

見渡す限りの地表に多種多様の奇岩を噴出させたのは、

渓谷の東方に威風堂々とした姿で聳えるエルジェイス山だ。

標高約3900メートルの火山は、中央アナトリア地方で最高峰だ。

世紀を超えて何度も大規模な噴火を繰り返し、山を取り囲む大地に成分や性質の異なる溶岩を噴出し続けたのだ。

その度ごとに硬度、色彩に変化を加え、ヴァリエーションの進行が柱状に刻まれた。

 

円錐の頂点から底辺に向かって末広がりの形状となった岩は、溶岩を側面に沿って流した痕跡だろうか。

三角帽子が衣装棚に並んでいるようにも見える。

サーカスの舞台に出る前の道化師ならば、どの帽子を頭にかぶるか迷ってしまうことだろう。

同じ岩も角度を変えて見ると、異教徒から身を隠す修道僧に見えたり、海岸線で日光浴をするオットセイに見えたりもする。

イマジネーションの谷」では、訪れた人の想像力が最大限に膨らまされることになる。

ところが、小高い丘の上に全ての人の想像力を停止させるオブジェがある。

どの方向から誰が見ようと、ラクダが胸を張っている姿にしか見えない。

2つのコブと長い首がバランスのとれた構図を形作り極めてリアルだ。

褐色を帯びた岩肌はラクダの肌を思わせる。

写真(遺跡77-2).JPG を表示しています

乾いた大地を生活環境とする人々にとって、ラクダは生き続ける上で貴重なパートナーだ。

酷暑や乾燥を苦にすることなく重い荷物を運んでくれる。

ラクダは命綱としての役割を果たしてきた。

ラクダ岩を見つけた人は砂漠の舟の出現に、さぞや歓喜したことだろう。

背中のコブによじ登ってみたいという衝動にかられる。

ラクダの背中に乗れば視野が広がり、緑と水に溢れる場所に移動することもできよう。

でも、10メートル近くもある岩の上には辿り着くのは難しそうだ。

むしろ、乾いた喉を潤すための冷水を捧げる方が、ラクダにとっては有難いことだろう。

 

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