食のグローバリゼーション 71

 

 

木槌で甲羅を叩き割りながら食べるカニ料理

~ エクアドル料理 カングレホ・アル・アヒオ ~

 

地球上には数えきれない種類の動物が、人間とともに共存している。

体型や生活環境から分類されることもあるが、食にスポットをあてて分類することもある。

肉食動物、草食動物は産まれてから死ぬまで、同じ種類のものばかりを食べて暮らす。

偏ったものばかりを食べていると、栄養の面で疑問を感じるが、人間は何でも食べる雑食性の動物ということになる。

 

雑食という言葉の響きにネガティヴな面を感じないでもないが、口にする食材がバラエティーに富んでいるわけだ。

日々の食事では、肉類、植物類を含め多種多様の食材をバランスよく組合せ、食卓に豊かなメニューを並べたいものだ。

食材を包丁で適当な大きさに切って、食べやすい形に料理する。

ところが、どのように調理しても食べにくい食材がある。

その代表格が、カニではないだろうか。

 

宴会などの会食の席にカニ料理が登場すると、賑やかだった会場が途端に沈黙に包まれる。

出席者の全てが揃って黙々と甲羅から身を穿り出し始めるのだ。

簡単に身を取り出すことができればいいのだが、全員手をベタベタにしながら目的達成のための作業に集中する。

一心不乱に作業をしても、得られる成果は期待通りとはいかないことが多い。

骨折り損になることもしばしばあるが、日本の食卓からカニが消えることはないだろう。

 

甲羅と格闘することなく効率的な作業をするために、カニ専用のハサミやフォークを準備してくれることもある。

専用グッズがあれば鬼に金棒だ。

フォークには甲羅の形状に合わせた曲線構造が施され、万能のように思える。

ところが、日本人の工夫は世界的に通用するものではなさそうだ。

赤道直下に生息するマングローブガニを食材とするエクアドルでは、とてもユニークな方法でカニの甲羅に挑むようだ。

 

エクアドルの中でも特に数多くのカニ専門のレストランが点在するグアヤキルで一軒の専門店に入ってみる。

テーブルに着くなり、最初に準備されるのはガラス板と木槌だ。

突然の予想外のものが登場すると、傾げた首が元の位置に戻らない。

傾けた首を360度回転すると、周囲のテーブルにも同じものが、一つずつセットで完備されている。

どうやら必需品のようだ。店の人に聞くより、周囲の人の様子を観察して使い方を把握するのが手っ取り早そうだ。

 

すると、カニの足を一本ずつガラス板の上に置いて、木槌で甲羅を叩いている。

間近で実演確認した方法は自ら実践するべきだ。

カングレホ・アル・アヒオをオーダーする。カニ3杯で一人前は多すぎるように思うが、周囲のテーブルには小ぶりのカニが山盛りに盛られている。

暫くすると目の前にマングローブガニの山が運ばれてきた。

真赤に茹で上がったカニが、塩、コショウ、ニンニクなどを使ったクリーミーなソースに浸かっている。

写真(食71-2)-2

エクアドル流のカニ賞味方法に初挑戦だ。

しっかりと実演観察したつもりではあるが、木槌で甲羅を叩いてみても、思うようにカニの身が解れてくれない。

砕いた殻が飛び散りテーブルの上に散乱する。

きっと木槌の使い方、叩く場所、力の加減に隠されたノウハウがあるのだろう。

熟練者と初心者の違いが、くっきりとテーブルに現れる。

 

エクアドルのカニレストランでも、やはり口数はやや少なくなるようだ。

とは言っても、

日本のように無言になってしまうことはない。

むしろ、ハンマーで甲羅を砕く音が鳴り響き賑やかになる。


カニを食材とする国民は、どこの国でも甲羅の処理に工夫を凝らしているわけだ。

専用のグッズには、食材とするカニの種類や国民性が反映されていることだろう。

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る