Vol.2 : 9 Questions for 東 信

フラワーアーティスト・東 信

現在ベルギーで開催中の「Alter Nature」展。白一色の空間で、凍った松を閉じ込めた新作「Frozen Pine」が強烈な生き様を見せつけています。したたり落ちる氷柱が抽象的な世界を感じさせながらも、氷が溶ければ紅葉が始まっていく。
そんな経過すらパフォーマンスにしてしまう東さんのアートワーク。
根底には一生かけて取り組むテーマがありました。
「9 questions」から垣間見える熱い「想い」、そして揺るぎない「決意」に、ぜひ触れてみてください。

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何かを成し遂げるのは難しくても「真剣にやる」のは簡単なこと

 
1, 現在までにいちばん影響を受けた人物はどなたですか?

自分の考え方が変わったのは、ナポレオン・ヒルの「思考は現実化する」という本に出会ったときですね。 僕は1976年生まれなんですけど、就職氷河期で、自分たちでやらなきゃどうしようもないという状況だった。音楽がやりたくて片田舎から上京して、たまたま花屋でアルバイトをしながら自分の店を持ったはいいけれど、ひどい見切り発車でね。ああダメだなーと思っていたときにこの本を読んだら、「人間の考えることで不可能なことはない。考えたことは実現できる」と書かれていて…。その考え方がかっこよかった。

パンクな感じ。今はもっとたち悪くて「悟り世代」っていうの? うちの若いスタッフなんかもそうだけど、すぐ諦めちゃう。「できない」って。一番嫌いなのは売れないアーティストの言い訳だね。
時代が悪いとか何かのせいにしては自分を正当化してる。世の中で何かを成し遂げるのはすごく難しいことだけど、「真剣にやる」ということは簡単なんだよ。プライドとかそういうの全部捨てたらね。そういう人たちには「見るまえに跳べ」という大江健三郎さんの言葉を贈りたいですね。

 

植物と向き合っているときのように広がるイマジネーション

 
2, 一番お気に入りの音楽は何ですか?

ロック、パンク、なんでも好きですけど、最近はインストゥルメンタルを聴くことが多いですね。
「TOE」という日本のバンドがあるんですが、センスがいい。
テンションが高いときも静かなときも関係なく聴ける音楽で、哲学的な音なんですよ。テクノも入りつつ、エレクトリカルなんだけど、ちゃんと生音も入っている。これを聴いていると、植物と向き合っているときのように、ふわっとイマジネーションが広がるんです。とはいえ、制作しているときは基本的に無音ですね。植物を切る音や水の音を、全身全霊で感じながら作業します。
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「何かを見て」というより「何かを感じて」生きている

 
3, アイデアを出すときにいつもしていることはなんですか?

意識はしていないのですが、「何かを見て」というよりは、「何かを感じて」ということが多いですね。例えばゴッホの作品を観て感動しても、ゴッホのような作品を創りたいとは思わない。

逆に、植物に触れているときに、あの絵の感じだな、取り入れてみようかな、というのはあります。
もちろん珍しい植物に出会おうとはしていますよ。
7年に1度しか咲かない花が咲けば見にいくし、仕事で海外に行けば植物園に立ち寄るし。基本的に毎日仕事をしているので、植物と触れ合っている時間がほとんどなんです。
この前もヘビのようにうねり曲がった松に出会って、どんな風に使おうかとドキドキしながら考えていました。

新種の植物を作ってみたいという気持ちは?

珍しい植物を人工的に創ることに関してはまだ心の整理がついていないですね。
自分の中に理想はあるけれど、創るとなると最後まで責任を持たないといけないでしょう。
最終的にどのような結果になって、環境にどんな影響を及ぼすのか、など。

植物には尊厳があるから、命をいただくからには個性を生かし、自然界にあるもの以上の美しさに創り上げなくてはいけない。真剣勝負だと思うんです。一番ダメなのは命をムダにする人ですよね。
料理人でいうと、まずい料理を作る人。

 

ガマンにガマンを重ねて育てるクリエイティビティへの憧れ

 
4, 現在の仕事ではなく、今別の仕事を選ぶとすると何がしたいですか?

欲望として「第一次産業」をしたいと思っていて、例えば百姓。
ガマンにガマンを重ねて育てていくクリエイティビティに憧れます。農家だと範囲が広すぎるので、「お米」かな。年をとったら本当にやりたいんですよ。1年を通じて1つのものを創り上げていくということを。

あと、僕は畑を持って路地モノの花を作っていますけど、最終的には自分の作った花をその場でアレンジして提供したい。究極だよね。そこまでやったら愛情はハンパないだろうな。
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一生かけて鼻に取り組むと覚悟を決めたとき

 
5, 現在の仕事を選んだ理由を教えてください

性格的に飽きっぽいんですよ。1つのものに収まりきらない。でも花は今日と明日では全く違う。
1日で10も年をとるといわれていて、明日には枯れているかもしれない。常に追いかけっこなんです。

花を始めて13年になりますが、常に新しい表情を見せられ追いつけないというのが魅力的。
とはいえ「これなら俺にもできるかも」という気軽な気持ちで花屋を始めたので、花を「商売道具」としてしか見ていなかった時期もあるんですよ。
それが出産祝いや誕生祝い、結婚式、発表会、葬式と、人生の節目に必ず花があって、花を受け取って泣いて喜んでくれる人までいる。
そんなシーンに立ち会っているうちに、花は「物」じゃなくて「気持ち」なんだ、ということに気付いたんですね。

生半可な気持ちじゃできないぞと、23〜24歳のときに一生かけて取り組む仕事だと覚悟を決めました。
まさか男兄弟3人でやんちゃに育って、女性に花を贈ったことすらない僕がこんな道に進むとは思わなかったですけどね(笑)。

出会うべくして出会ったな、とは思います。
 

ほかの花とは違うという自信もプライドもある

 
6, 10年後の自分を想像してどうなっているか教えてください

基本的なことは変わってないと思います。海外で個展もすれば、日本で3000円、5000円のアレンジメントも毎日作り続けていると思います。花屋としての自分がありつつ、アートワークも続けていきたい。
なぜ花屋にこだわるのかというと、毎日花に接していないとクリエイティビティは生まれないし、進化できないと思うんです。花を触れる環境に身を置いて、アートワークや個展で得たものをお客さんに還元していく。
それが花の価値を上げることにつながると思うのです。

いわゆる駅前で売られているような花もあっていいんですよ。
それとは別に、オーダーメイドで世界に1つのものを創ります、っていう花屋があってもいいと思うんです。
きちんとしたプレゼンテーションで作ってほしいという人たちに、配送はしません。
必ずスタッフの手で運び、「花」について、込められた「想い」について、伝えてくる。それは贈る人のプライドでもあるし、もらう人のプライドでもある。花は切られているわけですから、大事にしてもらいたい。100個花が集まる楽屋へのお届けだったら、一番際立つように、絶対に持って帰りたくなるものを創ります。

よく海外で活動していることを売名行為だと言われるけど、そこで活動する意味もあるし、ほかの花屋とは違うという自信もプライドもある。同じ金額ならどちらを選びたいか、それはお客さんが決めること。
 

「なにをしてもいい」という中に植えつけられた常識

 
7, 幼少のころ、どういう子供だったと思いますか?

花とも美術とも無縁のハナタレ小僧でしたね。
親父が福岡のフランス料理店でシェフをしているのですが、影響はぜんぜんなかったと思う。
親父が野球が好きで僕も高校までやっていて、甲子園は諦めたけど、「これからの時代はやりたいようにやった方がいいよ」という教育方針だった。一番上の兄貴は未だにバンド活動をしていますよ。
ただ、「なにをしてもいい」という中にもやっちゃいけないことはあると、基本的なことはしっかり教えられましたね。その厳しさは今役に立っています。たとえば、社会人で「報告」、「連絡」、「相談」ができないとか、電話の受け答えがなっていないとか、そういうのは幼いときの教育がすごく影響していると思うんです。
社長になって従業員が10人くらい増えたとき、初めてわかりました。今の若者たちはそんなこともできないんですよ。上司に尋ねればいいことを「わかりません」で済ませるとか、そういうのは許せない。僕も社会に出たら意外と非常識で自分が変わらなきゃいけないこともあったけど、最近自分はまともだなと思います。子育て論になっちゃいましたけど(笑)、常識だけはありましたね。

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大きな車輪の中で、花と心中するつもりで生きている

 
8, 自分の性格を一言で表すとなんですか?

心がけていることは「パンクな人間でありたい」ということです。
自己満足するのではなく、常に壊し続ける生き方。いつでも疑問を持っていたい。作品を創ったら、今日の俺はよかったのか、これは本物だったのかと問いかける。「あたりまえ」とか、「当然」という見方も大事なんだけど、たまには斜めから見て、壊して新しいモノを創っていかないといいものは生み出せない。店のスタッフにもいつも言うんです。
例えば、難なく花が売れていくのを目の当たりにしたら、「花を売ってあげている」みたいな勘違いをしてしまうかもしれない。その感覚は怖いじゃないですか。それと同じで、いろいろなことに疑問を投げかけ、意識していかないと、と思います。

守りに入ることはネガティブ?

年齢を重ねると、結婚をしたり、子供ができたり、守らなくてはいけないものが出てくる。
それはわからなくもないのだけど、もともとなぜ生きているのか、なぜこういう思想を持っているのかと考えたとき、僕は結婚したくて生まれたわけじゃないんですよ。花と心中するつもりで生きているんです。
お金持ちになるためとか、いい車に乗るためでもなく、花の価値を高めるために生きている。だから最後まで貫き通す。僕に課せられた使命は自分の一生だけでは終わらないから、この会社を継ぐ人間が現れたら引き継ぎ、賛同者を増やさなくてはと思っています。これはものすごく大きな車輪だから、僕がいなくても戦いは続いていくでしょう。

 

美しくありたいという気持ちが大切。諦めたときに終わる

 
9, 異性に求めることはなんですか?

うーん、難しい。ないですねぇ(笑)。
キレイな人は好きですよ、そりゃあ男ですから。美しくありたいという気持ちが大切。諦めたときに全部が終わりますよ。
「キレイ」というのは「心」がね。うちの2軒隣に歩けないおばあさんがいて、犬を飼っているんだけど、車椅子にも乗らず地面を這いつくばって散歩してるんです。見つけたら代わってあげるんだけど、それを見て見ぬフリをする人もいてさ、そういうのはいくら外見がキレイでもダメだなーと思うわけ。

人として助けるのはあたりまえじゃないですか。同じ年齢くらいのお年寄りが助けていたりするんですよ。
だから、人としてあるべき内面の魅力を感じたときにステキだなと思いますね。今みたいに個人主義で、自分さえよければなんでもいいという時代に、どれだけ人のことを考えられるか…思いやりが大切ですよね。
僕の職業は常に人の気持ちを感じて、花を媒体に伝えられる。お客さんが喜んでくれるのがこの上なく幸せなんです。
お金をもらって「ありがとう」と言われるなんてスゴイことですよね。
気持ちのやり取りができる。それが花屋のいいところです。

interview&text 清水麻衣子

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