食のグローバリゼーション 70

仄かな甘みが漂うカニ入りスープ

~ エクアドル料理 ソパ・デ・カングレホ ~

 

日本でカニの生息地を探すと、北海道から本州にかけての日本海側が中心となる。

季節的にも、夏季に比べ冬季の漁獲量の方が圧倒的に多く、冬の代表的食材となっている。

日本人にとって馴染みの深い毛ガニ、ズワイガニ、タラバガニなどは、きっと冷たい海の水の中でしか生きられないのだろう。

よもや、熱帯の海にカニが生息していることは想像し難いことだ。

 

ところが、赤道直下の海にもカニが生息しているのだ。

南アメリカ大陸の北端近くに位置するエクアドルの太平洋の沿岸には、マングローブの林が延々と続く。

潮が満ちると塩水に晒されたマングローブの根近くに、小ぶりのカニが姿を現す。

全身が茹でられたわけでもないのに、甲羅が赤色をしたマングローブガニだ。

日本海でよく見かけるカニとは少し体型が異なり、横長の胴体をしている。

世界の海には何種類ものカニが生きており、日本の海で見かける種類は、ごくごく一部でしかないのだ。

 

太平洋に近いエクアドル第2の都市グアヤキルでは、マングローブガニを使った料理が名物となっている。

市街地にはカニ料理だけを扱う専門店が、数多く点在している。

中には日本のカニ道楽を思い起こさせるようなオブジェを店頭に飾っているところもある。

ハサミや足を様々な角度で組み合わせると奇抜なデザインができあがり、店を訪れた人の顔を和ませている。

 

カニ料理だけで食事をしようとすると、味に変化がなく途中で飽きてしまいそうだ。

でも、料理方法を変えればたった一つの食材であっても、バラエティー豊富な味わいを引き出すことができる。

料理が順番にテーブルに届くに従って、新たな味覚を発見することができるのだ。

日本では冬季が旬のカニ料理は、熱帯のエクアドルでは一年中新鮮な味わいが楽しめる。

カニ好きの人にとっては、もってこいの環境と言えそうだ。

 

カニ料理専門レストランでの食事とはいっても、いきなりカニの姿を登場させるのではなく、ディナーはやはりスープから始めたい。

「ソパ・デ・カングレホ」は、カニ入りのスープだ。

似通ったメニューを日本で探せば、カニの味噌汁になるだろう。

味噌汁にハサミの部分や足を一本甲羅ごと入れ、溶け込んだカニの風味を楽しむ。

 

ところが、エクアドルの「ソパ・デ・カングレホ」では、甲羅から剥ぎ取られたカニの身がスープに入っている。

しかも、白色の身が液面から溢れ出している。

スープというよりは、見た目からは煮込み料理に分類する方が適当かもしれない。

溶け出した風味を味わうというより、カニが本来もっている味をそのまま味わうわけだ。

どっさり入ったカニの身は、固い甲羅と格闘することなく口に運ぶことができる。

 

日本では味わえないスープなので、何とかレシピを解明しようと試みるが、様々な素材が絡み合っているのだろう、入っている食材で判別ができるのはカニだけだ。

スープの粘度は高めで、口当たりは液体の料理にしてはどろどろとした食感となっている。

緑色のスープの正体はカニミソで間違いないだろう。

こってりしたスープの味わいの中に、カニから溶け出すほんのりと甘みが絡み合う。

 

「ソパ・デ・カングレホ」を飲み干したならば、メインディッシュへとテーブルを進める。

食材は一つでもメニューは豊富だ。

シンプルに塩とバナナを入れて湯がく、ココナッツやニンニクオイルなどとともに茹でる。カニの甲羅の中に生クリームやカニの身を入れてグラタン風にする、他にもチャーハンやサラダ、セビチェなどにも使われる。

これだけのメニューが揃えば、同じレストランに連日通うこともできそうだ。

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