ガラパゴスのアニマル・アート/ネイチャー・アート 21

ユニークなポーズをとりながら体温の調節をする変温動物

~ ガラパゴス サンタ・クルス島 ウミイグアナ ~

 

社会生活を営んでいる人間は、何かにつけて環境の変化に直面する。

取るに足らない変化であれば容易に吸収できるが、場合によっては人生を変えることにもなりかねない。

自らを取り囲む環境にうまく順応していけば、より豊かな人生にも繋げることも可能だろう。

 

人間ばかりでなく、動物だって思わぬ環境変化に見舞われることがある。

南アメリカ大陸の陸上に生息していたイグアナの中には、洪水などの影響によって流木などに掴まって太平洋を渡り、ガラパゴスに漂着したものがいるようだ。

大陸という環境から周囲を海で囲まれた島に生活環境を大きく変えたわけだ。

しかも火山岩で覆われる島には、食料とする植物は乏しく、生命の危機に瀕する。

 

そこで、イグアナは海に潜ることを覚えた。

陸上の植物ではなく海藻を食料としたのだ。

ガラパゴスで進化を遂げた新種のイグアナは、ウミイグアナと呼ばれるようになった。

世界に600種類以上いるイグアナの中で、海に潜ることができるのはガラパゴスに生息するウミイグアナのみだ。

島々にはリクイグアナも共存するがその数は約1万頭だ。

これに対しウミイグアナは、70万頭を超える。

環境に順応することによって大きく繁栄したわけだ。

 

潜水能力を得たウミイグアナは海底にたなびく海藻を剥ぎ取るように食べる。

口には硬く厚い唇を備え、中にはギザギザの歯が並ぶ。

ガラパゴスの生物の中で海藻を食べるものがいないため、豊富な食材を独占することができた。

 

ただ、海に潜って海藻を食べるのはオスに限られ、体の小さなメスや子どもは岩場で退潮時に採餌する。

泳ぎの得意なオスは、10メートル近くの水深まで潜るが、波打ち際から50メートル以上離れることはない。

 

海底に辿り着けば豊富な食材にありつけるのだが、ウミイグアナの採餌を大きく阻むのは冷たい海水だ。

ガラパゴスの島々の間には、南極から流れてくるフンボルト海流と、諸島の西部から流れ込むクロムウェル深層流が流れている。

いずれの海流も寒流だ。

赤道直下に位置しながらもペンギンが生息するのは寒流がもたらす冷たい海水のおかげだが、変温動物のウミイグアナにとっては大敵となる。

 

冷たい海水の中でウミイグアナが泳げるのは、長くて1時間程度なのだ。

海水の中で体温を奪われ動けなくなってしまい、溺死することもしばしばあるようだ。

体温が低下する前に空腹を満たし、急いで島に戻らなければならない。

 

海から陸地に戻ると、冷え切った体を温めるために黒い溶岩の上で日光浴をする。

太陽の光が体に充分当たるように、太陽に向かって体を垂直にする。

日光は体を温めるだけでなく、腸内細菌を活性化し消化を促進するという働きもあるようだ。

体温が適温になったところで、漸く体を横たえる。

 

写真(ガラパゴス21-2)

 

ところが、ガラパゴスの島々に降り注ぐ太陽の陽射しは、熱帯の厳しいものだ。

タイミングを逸して体温が上昇し過ぎることもある。

すると、今度は腕立て伏せのようなポーズで腹部に風を通したり、日陰や海水だまりに移動したりする。

変温動物にとって体温を一定に保つには大変な努力が必要なのだ。

一日のほとんどの時間を体温調節のために費やしているようにも見える。

 

体温が適温になれば、島の中を歩き回る。

諸島内のどの島にいてもどこからともなくウミイグアナが姿を現す。

サンタ・クルス島のショッピング・ストリートにだって出没してくる。

道路を這いまわったり、横切ったり、人間を恐れることはない。

種類の異なる生物が共存するのがガラパゴスの世界なのだ。

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