アンデスの大地に刻まれるアース・アート 21

乾ききった砂の大地に聳える巨大なピラミッド

~ ペルー ナスカ カワチ遺跡 ~

 

南アメリカ大陸を南北に高峰を連ねるアンデス山脈の麓、ナスカ川とインヘニオ川に囲まれる乾燥しきったパンパに、数々の地上絵が描かれている。

東西40キロ、南北50キロにも及ぶエリアに、動植物の図柄や、幾何学な図形の描写が点在する。

ナスカの地上絵は約2000平方キロメートルの水平な地表をキャンバスとする平面的なアートだ。

立体的な起伏があるとすれば、熱帯の厳しい陽射しによって酸化し褐色に変色した土砂を取り除いた深さ数十センチの溝だけだ。

地球の表面の僅かな凹凸が、高度数百メートルの空に向かって、くっきりと輪郭線を浮かび上がらせているのだ。

 

ナスカに隣接するパルパなどのエリアにも、似通った技法で数々の地上絵が描かれている。

古代ナスカに暮らした人々は、平面的アートだけで満足していたのだろうか。

現代のアートにおいては、絵画などの平面的なものに加えて、彫刻などの立体的なアートがある。

ナスカの人々も、平面だけではなくアートを三次元に拡張している。

 

ナスカの地上絵が描かれるパンパから南の方角に向かって、舗装されていない砂利道を車で走ってみる。

遠方に見える山の姿はタイヤが回転するに従って、ゆっくりと形を変えるのだが、足元には延々と乾ききった砂利ばかりが広がる。

地表の僅かな起伏を増幅して振動する車に2時間足らず乗っていると突然、砂漠のような大地に巨大なピラミッドのような巨大な建造物が姿を現す。

 

ピラミッドと言えば、誰もが先ずエジプトを思い浮かべるだろう。

ところが、四角錐状の大型建築はエジプトに固有のものではないようだ。

ナスカの郊外に建つカワチ遺跡は、エジプトのピラミッドに勝るとも劣らないスケールで聳え立っている。

 

約20平方キロにも及ぶ敷地の中心部分は、4つの区画に分かれ様々な建築物が建っている。

2つの巨大なピラミッドが広場に向かい合うように聳立し、右側には階段神殿、左側には複合建築物が建造されている。

カワチ遺跡は、ナスカ時代の祭祀センター、宗教都市と考えられている。

ナスカの人々がどのような宗教儀式を行っていたかは定かではないのだが、青空を背景として高々と聳えるピラミッドの姿を見ると、太陽を神として崇めていたと想像することができるのではないだろうか。

 

形状的にはエジプトのピラミッドと酷似しているが、建築資材には大きな違いがある。

エジプトのピラミッドは大きな石を何層にも積み上げて作られているが、カワチ遺跡ではアドベが組み上げられている。

アドベは、砂や粘土、藁、または糞を太陽の光に晒して干して固めた日干しレンガだ。

熱帯の厳しい陽射しが降り注ぐナスカでは、容易に作ることができる建築資材だ。

日干しレンガは耐久性に極めて優れるため、4000年以上も昔に作られた建築物も、創建当初の姿のまま現在に残っているものすらある。

ペルーの国内では海岸部だけではなく山岳部でも、アドベによる建築物を見ることができる。

リマやクスコなどの近代的な大都市ですら、郊外には今でもアドベの家が数多く建ち並んでいる。

 

写真(アンデス21-2)

 

カワチ遺跡は、ナスカ地方の生活現場の独特の気候を巧みに活用した建造物なのだ。

砂丘のような大地に、日干しレンガで高さ約20メートルの建造物を建て、太陽が東から西に移動する大空に近づこうとしたのだろうか。

 

写真(アンデス21-3)

 

カワチ遺跡は、現在も数多くの研究者達によって盛んに発掘調査が行われている。

調査が進むに従って、古代ナスカの謎が次第に解明されていくことだろう。

それが、残されたナスカの地上絵の謎を解き明かす鍵となるに違いない。

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