五木田智央-不完全な美ほど人を虜にする

ベーコンが画家として頭角を現したのはタシスム(50年代にフランスで起こった抽象表現主義の一風潮、フランス語の染みや汚れと言ったtacheに由来する)全盛の頃、自己実現を実践した数少ない画家であった。

当時ニューリアリズムというフィルターを掛けられたベーコンは、唯一ポップアートと言う名札が取り柄だと揶揄されたりもした。

ベーコン語るところの曖昧の一端を覗かせる画集と出会った、そこは国内外のアート、デザイン、ファッション書籍などを取り扱うブックセレクトショップ。

画集に感嘆し、いざ美術館へ趣くと想像していたものとは違い、落胆することも少なくなかった。

それが一度や二度ではない、この絵はどうだろう……期待外れとなるかそれともため息の扉が開くか想像の域は出ない。

アーティストの名は五木田智央(46歳)、プロフィールには、”2000年、リトルモアより作品集『ランジェリー・レスリング』を出版。

カルト的な人気を集める五木田の初期作品は、おもに紙に即興的に描かれたドローイングであり、展覧会の場で発表されるだけでなく、むしろイラストレーションとして、また美術系雑誌を媒体として数多く発表されている。

近年に描かれたカンヴァスにグワッシュを用いた白黒のシュールな人物像は、いち早くニューヨークやロサンゼルスで注目され、現在は美術の世界にとどまらず音楽・出版・ファッションなど各方面に活躍の場を広げている”と書かれていた。

画家というカテゴリーには収まらない活動をしているわけだ、実に頼もしい、新種の横尾忠則登場という感じか。

ここ数年、日本人画家はとみに有名だ、村上隆、奈良美智と世界で弾けている、しかしその何れも好みではない。

この絵のどこにアートを感じるのかよくわからない。

であるならポケモンもアートだと言いたい。

アートはかくあるべきだとは思わないが、何かしら宿命めいたものを感じつつ、その絵から危機孕むようなメッセージが伝わってくる、それがアートだと常々思っている。

とにかく日本はこの手のビジネス(キャラクター、アイドルグループの類)で大もうけしているように見えてならない、欧米人の数パーセントが日本のクールとやらを、奇妙きてれつなものに視線を向け騒ぎ立てている、それを日本人は大喜びしている、風である。

このまま、理解不能な”ジャパン・クール”を額面通りに日本人が喜んでいると赤っ恥をかくことにはならないか。

そんなモヤモヤ感の中で、見つけたのが五木田智央だった。

作品集に描かれた絵は抽象とも具象とも言えない表情を見せつける、うまく言葉に言い表せないがモノクロームの人物像はタマラ・ド・レンピッカを想起させる。

色遣いもスタイルも全く違うのだがなぜかレンピッカの絵が浮かんでくるのだ。

アール・デコ、あるいはキュビズムに耽溺し、美意識の極限に挑んでいったレンピッカ。

配色が作り出す光と影が強烈な印象のレンピッカ、見る者を挑発せずにはいられない強い自意識が原色の中に色濃く含まれている気がする。

一方、五木田はモノクロームで光と影を描く、一瞬エアブラシで描いたのかと思うほどメタルチックなのだが、グラデーションの妙が際だっている。

そこには微妙にレンピッカと違う主張が見えてきた、未完成の美とでも言えば良いだろうか。

くっきりと描く線というより偶発的にできた形にどことなくエロティックな要素を取り入れ表現していく、そんなことが作品集から感じ取れていった。

実際、本物を見ていないので想像を巡らすことしかできない、五木田の作品展はまだ行われているようで是非足を運びたいと思っている。

場所は千葉県の佐倉市にあるDIC川村美術館、会期は8 月31日〜12月24日まで、行けると良いが。

 

五木田智央

自称「ランジェリーレスラー」のイラストレーター兼ハードコアレイアウター&たまにDJ卍として活動中。

みちのくプロレスのポスターでニューヨークADCの金賞を受賞。

パルコギャラリーやレコードショップで個展を開催。

LAのNew Image Art Galleryやgallery ROCKETのグループ展にも参加し、多彩な活動を行う。

自ら暗黒時代と呼ぶ長く暗い地獄の下積み時代を経て、1998年、イラストレーション界に電撃的に乱入。

雑誌『 Barfout!』の表紙を飾ったUAの顔面の作品や、忌野清志朗のCDジャケット『GROOVIN’TIME』などで注目され、各界に衝撃をもたらした。

「ファインアートとイラスト界の境界線をとりはらう」と豪語する五木田は、その後も気骨のある新星として果敢に活動。

1999年のメキシコ武者修行から凱旋帰国するや、さらなる変貌をとげたが大ブレイク。

90年代後半に、即興的に描かれたドローイング作品により注目を集める。

近年は白と黒の色彩で描く人物画など、具体的なモチーフを見せつつも抽象的なペインティング作品を手がけている。

日本国内での広範囲にわたる出版・展示活動に加え、ニューヨーク、ロサンゼルス、ベルリンなど海外の個展・グループ展にも参加し、高い評価を受けている。

2008、2012年にタカ・イシイギャラリーにて個展を開催。

2012年にDIC川村記念美術館の「抽象と形態:何処までも顕れないもの」展に参加。

作品集に『ランジェリーレスリング』リトルモア刊(2000年)、『シャッフル鉄道唱歌』天然文庫刊(2010年)など

。2014年1月の”Mary Boone Gallary, NY”での個展に続き、8月31日から川村美術館にて”THE GREAT CIRCUS“と題した個展を開催。

 

 

主な個展 2014

2014 Mary Boone Gallery(ニューヨーク)

2012 「Secret Life」Bill Brady/ KC(カンザスシティー)

「Variety Show」 タカ・イシイギャラリー(東京)

2010 「Funland」Aliceday (ブリュッセル、ベルギー)

「Wildest Dreams」 ATM ギャラリー (ニューヨーク)

2009 「Heaven」Honor Fraser(ロスアンジェルス)

「Champion Carnival」ATM ギャラリー (ニューヨーク)
2008 タカ・イシイギャラリー(東京)
2007 「Vanity Drunko」 Honor Fraser(ロスアンジェルス)
2006 「Drunko」ATM ギャラリー (ニューヨーク)
2005 「FINGER PRINCE」ギャラリートラックス(山梨県)
2004 「Black Gainers」 art zone(京都)
2003 「OH !天国」 キリンプラザ大阪/ナディフギャラリー (東京)
2002 「Merrow Master Cuts Vol.2」康ギャラリー(東京)
2000 「ランジェリー・レスリング」渋谷パルコギャラリー(東京)/名古屋パルコギャラリー(名古屋)/ 福岡アルティアム(福岡)
1997 ギャラリートラックス(山梨県)

 

※年譜資料の提供:タカ・イシイギャラリー

 

 

 

 

 

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