食のグローバリゼーション 77

どろどろのホウレンソウのペーストに豆腐のようなチーズがトッピングされた煮込み料理

~ インド料理 サグ・パニール/パラク・パニール ~

 

外出しているときに空腹を感じながらも、ゆっくりと食事をする時間がないときに利用する飲食店と言えば、そば屋、牛丼屋か、カレーハウスだろう。

オーダーすればアッと言う間に料理が運ばれてくる。

入店から、オーダー、食事、出店の一連の工程をほんの数分で済ませることも可能だ。

そば屋や牛丼屋であればメニューを一瞥するだけでオーダーすることができるだろうが、カレーハウスではメニューを眺めながら悩んでいる人を見かけることがしばしばある。

 

カレー専門店だからカレーしかないはずだ。

でも、メニューを開くと、上から下まで数多くの料理名が並んでいる。

ビーフ、ポーク、チキン、マトン、シーフードなどメインとなる食材の種類からはじまり、その他の具材や辛さを示す表現が料理の名前に盛り込まれているケースも多い。

短時間で済まそうと思ってカレーハウスに飛び込みながら、思わぬ時間を要してしまうケースもある。

 

カレーはインドから伝わった料理と考えられがちだが、インドにはカレーという料理はない。

日本人が見るとカレーと表現するしかない煮込み料理が豊富なのだ。

その種類は、日本のカレーハウスのメニューどころではない。

タンドリーチキンやシークカバブ、サモサなどのサイドメニューを味わった後でも、ナンと煮込み料理で締めくくらなければインド料理を味わった気にはならないものだ。

 

一般に日本のカレーハウスでのメインの食材の味を引き立てるベースの具材はジャガイモ、タマネギ、ニンジンが定番だろう。

これらの食材をベースにメインの肉やスパイスに工夫が凝らされ、他の店にはないオリジナルな香りや辛さが作り出される。

カレーハウス一店舗のメニューを制覇しようとすると、1ケ月近くかかってしまうこともあるだろう。

 

インド料理では、あらゆる食材がスパイスとともに煮込まれる。

日本人ではカレーの具材としては思いつかないような素材も数多く使われる。

ホウレンソウとチーズのカップリングは、容易に思い浮かばないだろう。

ところが、インドではサグ・パニール、またはパラク・パニールという料理が、ほとんどのレストランのメニューに並んでいる。

 

現地語でサグ、パラクは各々、青菜、ホウレンソウを意味する。

サグ・パニールの材料に使われる青菜は、菜の花、ルッコラ、辛子菜など、緑色の葉野菜ならば範疇に入り、それだけでも数々のバラエティーが考えられる。

植物の葉の色がそのままペーストに溶け出し、サグ・パニールもパラク・パニールも青味を帯びた色彩となる。

見るからにベジタブル料理だ。

 

しっかりと煮込まれた植物の葉は形をなさないが、ペーストの中に乳白色の固形物がトッピングされる。

豆腐のような外観をもつパニールだ。

牛乳や水牛の乳を温め、レモンやライムの汁などの酸性の液体で、タンパク質と脂肪分を凝固させて分離したカッテージチーズを押し固めて作られたインド独特のチーズだ。

ヨーグルトや各種のスパイスでマリネして串刺しにし、タンドールで炙り焼きしたパニールティッカなど、単独で料理されることも多いが、煮込み料理に鏤めれば酸味と風味が加わる。

さらに、生クリームでペーストの表面に円を描くと、ユニークな煮込み料理が完成する。

 

日本にも店内にタンドールを設置する本格的なインド料理のレストランが数多く見られるようになった。

ここでメニューに並ぶ、サグ・パニールは当然ホウレンソウが使われているのだが、パラク・パニールもホウレンソウが用いられていることが多いようだ。

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る