Vol.1: 9 Questions for 諏訪綾子×梶谷好孝

フードクリエーター・諏訪綾子×ジュエリーデザイナー・梶谷好孝

10月にラフォーレミュージアム原宿で行なわれた展覧会「ゲリラレストラン“LOST TONGUES”」で初のコラボレーションを果たした2人。

ファーストインプレッションは「運命に導かれた気がした」(梶谷)
「やっと会えた懐かしい感じ」(諏訪)
と話すほど、2人の間には目に見えない結びつきがあったようです。
「9 questions」で明らかになる2人の世界観に触れれば、きっとその理由がわかるはず…。

常識はひっくり返す。なかったら創ればいい

1, 現在までにいちばん影響を受けた人物はどなたですか?

梶谷 : アインシュタインですね。相対性理論などと難しいことではなく、私たちつくり手というのは主観で動くことが多いので、それを客観視して、オーガナイズしたりプレゼンテーションできる、ということが自分が生きていく上で軸になっているんです。自分のエゴだけで創るのではなく、周りに生かされているということを常に考えていたい。迷ったときは、自分はなにをしたいのかを見つめ直し、切り捨てるのか残すのか…。アインシュタインの思想が助けになっています。

諏訪 : さすが!アインシュタインって、舌を「ベー」と出している写真が有名ですよね。好孝さんも創っているものはぶっ飛んでいるし、誰にもマネができないのだけど、その反面芯はしっかりしていて根を下ろしている。そのギャップが魅力なんだろうなって、今回のコラボレーションで思いました。

梶谷 : 諏訪さんはだれに影響を受けましたか?

諏訪 : 私は20代のときに就いた仕事のボス・ナガオカケンメイさんに影響を受けましたね。ナガオカさんはもともとデザイナーなんですが、「デザインしないデザイン」とうたっていて、されていることがとても新しかったんです。20代って、自分探しをしたり、どう生きていこうか考えているときで、普通だったら自分のできることややりたいことを、社会の枠組みに当てはめていこうとするじゃないですか。目からウロコだったんですよね。

梶谷 : 常識をひっくり返すってすごく難しいですよね。

諏訪 : それから「なかったら創ればいいんだ」って思うようになりました。

納得できるものは自分の潜在意識の中に眠っている

2, アイデアを出すときにいつもしていることはなんですか?

梶谷 : 特別なことはなにもしないです。素晴らしいアイデアとかデザインって、私の中では発明に似ていて、そういうものは一生懸命資料を見ても、出ないときは出ないし、ムリヤリ出しても美しいと思えない。納得できるものは自分の潜在意識の中に眠っているような気がします。周りは心配していると思うのですが、ギリギリまで寝かせて、一瞬でポーンと出す感じ。途中で人に話した時点で崩れてしまうので、黙っていますね。そして迷っている間は、ぜったいに手を動かさないです。

諏訪 : 私もほとんど同じですね。方向性を決めたら、一旦脳の裏の方に置いて、忘れる。大したことのないものだったら忘れてしまうと思うので、脳にすごく頼っているのかもしれない。そうすると、あるときフッとひらめくんです。でも仕事のこととなると、常に無意識に考えている状態ですね。

道具を使わず自分を表現することへの憧れ

 

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梶谷 : 意外だと思うかもしれませんが、「専業主婦」なんです。主婦という仕事は立派なことだし、愛する家族のために全身全霊で生きるのも素晴らしいと思うのです。今は、千人、1万人の人たちの共通言語を見つけて、コミュニケーションをとるような、対極のことをしていますが、例えば身近な家族を幸せにできているのかな、と考えたときに、愛する何人かの人たちのためだけに、家の中でパンを焼いてあげたりする人生もいいな、と思うんです。

諏訪 : 好孝さんの焼くパンってすごそうですよね(笑)。ふつうのパンでは終わらないでしょう。

梶谷 : ふふふ。家事は好きなんですよ。でも制作していると、血液が脳に持っていかれてしまうことがあって、食欲がわかなかったり、耳も聴こえなくなったりすることがあって…。

諏訪 : 私は才能があればの話ですけど、今ではなく、生まれ変わったら、ダンスを踊るとか、歌を歌うとか、道具を使わずに自分の体だけを使って表現するということに憧れがあるんです。今やれって言われたらやらないですけど(笑)。

梶谷 : わかる気がします。いつも自分以外の物質を使って表現しているから、体の動きや声などで表現できるのは素晴らしいと思いますね。

見えない「なにか」に引き寄せられてここにいる

4, 現在の仕事を選んだ理由を教えてください

梶谷 : たぶん「選んだ」っていうより、「選ばれた」という方がふさわしいのかもしれません。自分で決心したのではなく、自然に導かれた感じですね。もともとはファッションデザイナーになろうと思っていたのですが、オートクチュールのジュエリーデザイナーのところに行ったら、ジュエリーの方が表現の幅が広いし、素材もいろいろ使えて、この世界だったら新しいことができるのではと思ったんです。それからちょこちょこ創っているうちに話題になって、気付いたらジュエリーばかりに…。

諏訪 : 私も「選んだ」という感覚はなくて、「創った」という感じでしょうか。まさに「ない価値は創ればいい」ですね。20代のなにをやっても違う気がしていたときに、友人の誕生会で頼まれたのがきっかけだったのですが、見えない何かに引き寄せられた感じがありますね。自分の意思だけではなくて、周りの環境、出逢い、すべては必然と思えるものがあるんです。私も「選ばれた」が近いのかな。まだ最終地点ではなく、途中ですけどね。

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10年後の自分はなにをしてくれるんだろう、という期待

5, 10年後の自分を想像してどうなっているか教えてください

諏訪 : どうなっているかわからないです。想像できないし、想像できるようなことはしていたくないです(笑)。自分はいったい何をしてくれるんだろう、っていう期待する楽しみがある。自分を操縦している感じがします。

梶谷 : 私も将来のビジョンはあるけど、常に驚きと好奇心がある人生なので、たぶんずっとこんな感じだと思います。自分でこうなりたいと思っても、この魂が入っている時点でなにも変わらないし、このまま生き続けたら、面白い事をしてくれるんだろうな、という期待があります。

諏訪 : 何かを創るとしても、想像できるようなものにはあまり惹かれないですね。「見た事がないものはきっと素晴らしいはず」と思うので、10年後の自分と考えてみても、想像の範囲内だったらイヤだな、っていうのがあります。

1人では見られない風景を一緒に見て、喜びを共有したい

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6, 仕事をする上でいちばん大切にしていることはなんですか?

梶谷 : 好奇心と情熱です。自分を表現できる仕事に就けたと思っているので、私が携わることに関しては、心の底から好奇心と情熱を持って、その仕事から新境地を見つけ、ステージアップしていけるよう心がけています。

諏訪 : コラボレーションはいろいろあるけど、本当の意味のコラボって、1+1とか1×1が、1や2になるのではなくて、無限大になるようなことだと思うんです。まるで恋愛のように、相手を通して自分がよくわかる。だから1人では見られない世界を一緒に見て、嬉しさや好奇心を共有したい。クリエイションするときに大事にしているのはそういうことです。

1人遊びが得意だった子供が創り上げた自分だけの世界

7, 幼少のころ、どういう子供だったと思いますか?

諏訪 : 私は能登半島で生まれ育ったのですが、映画館もなにもない田舎町で1人で遊ぶことが多かったんです。そんなとき「おままごと」をしていて、中学校に入るくらいまでずっとやっていました。その辺にある草や葉っぱ、木の実、花粉、石、土、虫の死骸などで料理するんですが、変なものがどんどん出来上がるんです。友達にメニューを見せてオーダーしてもらって、しまいには絵の具を使ったり、材料のクオリティが上がっていきました。よく考えると今と同じことをしていますよね(笑)内へ内へ入って自分だけの世界を創るのが得意になりました。

梶谷 : 素晴らしい話ですね。私も1人っ子で、母親が病弱だったこともあり、よく親戚に預けられていたのですが、博物館やプラネタリウムに連れていってもらって、そこで宇宙のことばかり考えていました。目をつぶると宇宙に行けるんです。そして宇宙にどれだけ大きな文字で「よしこ」と名前が書けるか、試すんです(笑)最終的には宇宙が大きすぎて、自分がゼロになってしまうような感覚に襲われて終わるのですが、「命って?」とか、「私たちが生きているこの世界って?」と、ぐるぐる考えているような子供でした。

諏訪 : 宇宙に大きな字で「よしこ」って書いていたのがおもしろい(笑)今やっていることのイメージトレーニングみたいな感じですよね。

梶谷 : そうですね。孤独な時間がたくさんあったので、1人で妄想しているうちに、思考になっていったのかなと思います。諏訪さんと私が共通しているのは「子供のままの部分が多い」ことですよね。プライベートで「子供っぽい」と言われるのはショックなんですけど、クリエイターとしては嬉しいです。

幼なじみのように、会えば一瞬で子供時代に戻ってしまう

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8, 自分の性格を一言で表すとなんですか?

梶谷 : 人からもよく言われるのですが、「竜巻」です。周りはすごいエネルギーで動いているのに、中心部は案外静かで、なにもなかったりする。でも動くたびにドラマチックなことを引き起こしてしまうんです。たまたまそうなったのかわかりませんけれど…。

諏訪 : そういう星の下に生まれているんですよ。それって映画になりそうな感じですね。シャネルの伝記を見ても、すごくドラマチックなのに、本人は淡々としていたりするじゃないですか。梶谷 : 周りはハラハラですよ(笑)

諏訪 : 私は自分で自分のことがわからないです。たとえば好孝さんとコラボしたことでよく見えてくるようにはなるのですが、一言で表せるようになりたくないです(笑)

梶谷 : 諏訪さんの印象は、お会いする前にみんなから「私に似ている」と言われていたので、もっとキツイ人なのかと思っていたら、実際はすごく柔らかくて、おっとりしていたから、ビックリしました。いい意味で子犬のよう(笑)無邪気で、あらがえないかわいらしさがあって、幼なじみのような気がしました。小さいときに会っても一緒に遊んだだろうな、という…。コラボしたときは身長も小さくなって、子供たちが楽しくやっているという感じでしたよね。

諏訪 : そう、一緒にいるとパワーアップしていたずらができるような感じ。だけど、ふだん作品を創るときは女を意識しないのですが、あのときは女の強さが強調された印象がありましたね。

相手に求めるのは、お互いの視点を見せ合って乱反射する世界

9, 異性に対して求めることはなんですか?

梶谷 : 異性といわれて恋人を思い浮かべたのですが、「一緒にいると世界がいつもより美しく見える」、そういう関係になれるように、彼だけに求めるのではなく、自分自身もそうでありたい。ブルーストの好きな言葉で、「 新しい風景を求めることではなく、 新しい目を持つことである」という一文があるんですが、まさにそんな感じです。

諏訪 : 異性ではなくても、好孝さんが言っていたように、コラボレーションって恋愛に近いなと思っていて、「鏡」だと思うんです。相手にはいかに美しい景色を見せてくれるのかを求める。磨かれた鏡にはいままで見たことのない世界が広がっていることもあるかもしれないし、鏡が曇っていてよく見えないこともあるかもしれない。もしかしたらミラーボールのように乱反射して、いろんな物をクルクル見せてくれるのかもしれない。そこに自分でも気づいていない私が映し出されたら素敵だと思うんです。

そして自分にも鏡があるとしたら、合わせ鏡でさらに見える世界が広がるでしょう。だから常に自分の鏡を磨いておきたい。そして時にはお互いを磨きあう。自分にはない視点を見せ合うことで乱反射するような世界。それが相手に求めることかな。

interview&text 清水麻衣子

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