Vol.4 : 9 Questions for 吉田 ユニ

アートディレクター 吉田ユニ

ほわんとした魅力をまき散らしながら第一線で活躍するアートディレクター・吉田ユニさん。 最近ディレクションした写真集「高良健吾 海 鈴木心」(赤々舍)では、雄々しいほどの力強さを表現し、彼女の未知なる可能性を垣間見たようでした。

「写真自体がすごく力強いものだったので、あえて写真集には使わないような少しザラッとした紙を使って、大判で迫力の出る構成にした」という狙いは、「俳優の写真集」という枠を飛び越え、見る者を圧倒させるズシリと重い仕上がりに。

アイデアの泉はどこから湧いているのか、ふだんは伺い知ることのできない一面を発見しました。

 

今の自分が作られた原点

1. 現在までに影響を受けた人物はどなたですか?

これ!という、人生がパッと変わってしまったような経験はないかもしれません。

しいて言えば私はホラー漫画が好きなんですが、小学生のとき「学園七不思議」というアニメを見ていて、エンドロールにあったつのだじろうさんのお名前が印象的で。ある日本屋に行ったら、たまたま「うしろの百太郎」を見つけて、そこからハマッてしまいました。だけど、つのだじろうさんの漫画はふつうの本屋にはあまりなくて、古本屋に探しにいくようになったんです。そこで水木しげるさんや、つげ義春さん、手塚治虫さん、楳図かずおさんなどの作品に出会って‥‥。

漫画だけではなく、イラストだとリタ・アッカーマンや、ローラン・トポール、写真集もたくさん見ました。そんなきっかけからどんどん広がっていったような気がします。今も好みはぜんぜん変わっていないですね。いろんな方々から知らず知らず影響を受けているのかもしれません。

 

そのもの自体が刻んできた歴史が好き

2. 一番お気に入りの本はなんですか?

古い図鑑が好きです。昔の図鑑はリアルな絵で表現されていて、私の持っている「昆虫図鑑」はとても古く、細密画がステキなんです。親戚が捨てようとしていたものをもらったんですが、いろんなシリーズがあって、そのもの自体が刻んできた歴史も好きな理由の1つです。

アンティークというか、古めかしくなった紙の質感が好きで、小学生のときに憧れて、国語辞典を水につけたり、クシャクシャにしたり、紅茶につけたり、年季が入った紙にするためいろいろ試したことがあります。結局濡らしてしまったためカビが生えたり、破れたり、取り返しのつかないことになってしまいましたが(笑)。

左脳と右脳の間を行ったり来たり

3. アイデアを出すときにいつもしていることはなんですか?

アイデアを出すときとは限らないのですが、常にいろんなことをインプットするようにしています。

映画を観たり、本屋に行ったり、お笑いを観たり‥‥。

デザインというジャンルに関係なく、アイデアを考えるときにたくさん引き出しが用意できるようにと思って。すごくコンセプチュアルに考える左脳と、感覚的な右脳を、行ったり来たり考えています。

 

男同士の熱い絆に憧れる

4. 現在の仕事ではなく、今別の職業を選ぶとすると、何がしたいですか?

子どものころは刑事や鑑識に憧れていて、よく鑑識ごっこをやっていました。 耳かきの反対側に付いている白いわたにベビーパウダーをつけてポンポンはたいて、部屋中を真っ白にして怒られたことも(笑)。 たぶん刑事ドラマが好きでよく見ていたせいだと思うんですが、そういう「ごっこ遊び」をリアルに追求したくなってしまう子どもでした。

たぶん刑事に憧れていたのは、推理したり、解いていくみたいなことも楽しくて。 刑事ドラマでよく見かける“ピストルを下に向けて走る姿”をマネしたりもしました(笑)。 あとはマフィア映画も大好き。「ゴッドファーザー」と「インファナル・アフェア」、「男たちの挽歌」はマイベストです。男同士の絆とか、言葉にしなくてもわかる魂レベルでつながっている関係、みたいな。

 

休日は脳みそをリセット

5. 休日に必ずすることはありますか?

休日はあまりないんですが、ポッカリ空いた時間はわりと動いています。友達と話すことで頭の中が整理されたり、いいアイデアが浮かんだり、仕事を忘れてリセットするいい時間でもあります。

この前は友達が大きな生ハムを台ごとプレゼントしてくれて、生ハムパーティーをしました。お酒は飲めないのでぶどうジュースと一緒に(笑)。トランプも好きでよくやります。「神経衰弱」とか、「大富豪」とか、「スピード」とか‥‥。大人になるとあまりやらないですよね。 どうしても仕事のことを考えてしまうので、別のことに集中できるっていうのは気分転換になるんです。ボードゲームも好きです。手触りのいいアナログなゲームが好きなのかも。

子どものころはファミコンを買ってもらえなくて、発泡スチロールで本物そっくりに作ったりしていました。カセットもちゃんと作って。カセットを「ふーっ」とやる動作に憧れて、テレビにマリオを貼付けて、ピコピコゲームしているかのように遊んでいました(笑)。

限られた中でどれだけ表現できるか

6. 現在の仕事を選んだ理由を教えてください

もともと小さいころから工作とか絵を描くことが好きで、将来は何かものをつくる仕事に就きたいと漠然と思っていました。

中学から大学まで女子美に通い、高校まではずっと油絵や木炭デッサンをやっていて、大学へ行くときに就職のことも考え、興味のあったグラフィックデザインの学部を選びました。 そのグラフィックコースの中で広告の授業があって、制約のある中でどれだけ表現できるか、ポスター1枚の中に一瞬でわかる強いメッセージをどれだけ込められるか、ということがすごく楽しくて、広告の世界に興味を持ちました。

さらなる広い世界を目指し、まい進し続けたい

7. 10年後の自分を想像して、どうなっているか教えてください

40歳の自分‥‥。間違いなく仕事はずっと続けているかなぁと思います。

一生突き進んでいる気がします。ただ、アートディレクターとしてだけではなく、1人の女性として、いい歳のとり方をしていきたいですね。人間味が作品にもきっと現れてくると思うので。

仕事では今、20代前半の女性をターゲットにした仕事が多いのですが、老若男女、世代もいろいろ、広い層に向けてアプローチしてみたいですね。日本だけではなく、海外の仕事ももっとやっていきたいです。

大事なのはブレないこと、目的を見失わないこと

8. 仕事をする上で一番大切にしていることはなんですか?

「ブレないこと」ですね。

自分でこうと決めたからここから動かない、ということではなく、目的意識だけはブレないようにするというか‥‥。 仕事を進めていく中で、クライアントの意見だったり、予算の都合だったり、いろいろ変えなくてはいけないことって必ず出てくるんです。 そんなとき、言われたままに変える、というのではなく、一番いい解決策を考えます。

もしクライアントから自分の思ってもみない修正を出されたら、まずその理由を聞くようにしています。そこがわかれば、それならこうした方がよりよくなる、と別のアイデアを提案できるかもしれないし、自分が納得できる内容だったら変化もいとわないです。

目的さえ見失わなければ、お互いが最良の着地点を見つけられる。その針の穴のようなピンポイントを探るのもアートディレクターの大事な仕事だな、と思います。

一人遊びで追求したリアルなごっこ遊び

9. 幼少のころ、どういう子どもだったと思いますか?

鍵っ子だったので1人遊びが得意だったのですが、母に言わせると「変な子」だったそうです。

当時は赤いランドセルが主流の時代だったんですが、みんなと同じだったり、毎日洋服に合わない赤いランドセルを持つのがイヤで、こげ茶色のランドセルを買ってもらいました。 母はクリエイティブな人ではないのですが、そういうことに関しては寛容でしたね。

例えば私がすごくアルミホイルが好きで、誕生日プレゼントに「アルミホイルが欲しい」と言ったら、いろんな種類のアルミホイルをたくさんくれたり。

私は遊ぶときにおもちゃから作るのが好きで、「歯医者さんごっこ」をするにしても、ピンクの練り消しを歯茎の形に置き、拾ってきた白い小石を歯の形に並べて入れ歯をつくって、虫歯を黒いマジックで描いて、白い絵の具で塗りつぶして治療するという‥‥。 そういうことを黙々とやっていました。

おままごとの料理を折り紙でリアルにつくったり、マニキュアに憧れてペンで塗るんですけど、光沢が足りないからセロテープを貼ってツヤを出したり。 新聞紙を丸めて黒と緑の折り紙をスイカの柄に貼付け、さらにリアルに見せるために、スーパーのビニール袋に入れて持ち歩いてみたり。

細かいディティールにこだわるところは未だに変わらない感覚かもしれません。

about:吉田ユニ クリエイターページ

interview&text 清水麻衣子

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