「瑛九という画家」
日本の油彩画家の中でとりわけ異彩を放つ画家がいます。
宮崎県に生まれ、1960年に48歳という若さでこの世を去った、孤高の芸術家「瑛九(えいきゅう)」です。
この瑛九なのですが、自信のネームからEI-Qと自署しており、当時の芸術家の中では少し珍しいタイプだったのではないでしょうか。
作品の中心は油彩画で、抽象的な作品が多く繊細で幻想的な雰囲気でありながら、どこか官能的な匂いを醸し出す前衛的な作品が多いのですが、彼を語る上で外せないのが「フォトデッサン」集です。
1936年に発表されているフォトデッサン集「眠りの理由」を始め、およそ3,000点にも及ぶ作品を制作し続けていたとされています。
彼のフォトデッサン集は世界的な評価を得るべき作品ばかりなので、是非目に触れる機会があればその目で、素晴らしさを確認してほしいところです。
市場ではあまり高値がつかない瑛九作品(とは言いつつ、ウン十万円はしますが…)なのですが、学芸員、つまり美術関係者には非常に愛されているようで数々の美術館で回顧展が行われているそうです。
もしかしたら、彼の作品に出会うチャンスが近々あるかもしれませんね。
グラフィックデザインなどを用いた、最新の現代アートも素晴らしいですが“こんな芸術家が日本にいたのか”と歴史を振り返るのも悪くないのではないでしょうか。
中込 公一