物語.5

勇一と付き合うキッカケはバンドだった。

歌うことが大好きだった私は中学の頃、無理矢理に友人たちに楽器を買わせ(当然、個々の親が買ってくれたのだが)バンド活動を始めた。

ロックに入れこんでいた私は、ビートルズやKISSの曲を中心にコピーし、ドラム担当の梶原君の家の倉庫を無理矢理使って練習を重ねた。

そこそこ歌唱力があったためか、中学校2年生の学園祭で初ライブの披露後、“女王”といったあだなが付いた。

何故“歌姫”的な、可愛いあだ名でなかったのかは不明だが、きっと選曲によるものだった、と自分に言い聞かせている。

そして、社会人になった後でも、別にプロになる気があった訳では無いのだが、懸命に色々な人とバンド活動をしていた。

ある日、ネットで探し出したバンドメンバー募集掲示板で女性ボーカルを募集している書き込みを発見した。

曲目もオールドロックのコピーバンドということだったこともあり、遊び感覚でそこメンバーに入れてもらった。

そこでギターを担当していたのが勇一だった。

第一印象は“華奢な色白の男子だな”と思ったぐらいで恋愛的な感情は微塵も無かった。

ただ、勇一は私に興味があったのか、練習後はよく飲みに誘われた。

私に好意を持っているであろう、月並みの言葉を度々掛けてくれてはいたが、実際の飲み友達的以上の関係にはならなかった。

3ヶ月程たった後、メンバーは社会人であったし、コピーバンドといったゆるいノリも手伝ってか、自然に解散ムードが漂い始めた。

結局渋谷のスタジオで軽く音遊びをした後、「じゃ、またみんなの機会が合ったらいつか」という誰か一声でバンドは消滅した。

勇一にはバンドが解散した後も、何度か誘われていたのだが、私たちの関係は友達以上恋人未満から出世することはなかった。

つづく

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