アジアの遺跡に見る時空を超えたアート 10

青空、夜空を背景として一日中黄金の輝きを放ち続ける仏塔

~ ミャンマー ヤンゴン シュエダゴォン・パゴダ 1~

日本には無数の仏教寺院が、全国各地に点在している。そのほとんどは木造によって建築されている。寺院を装飾するものとして木彫りの彫刻などはあるが、華美な装飾が施されている例はない。色彩に注目してみても、自然の木材がもっている素朴な色合いだけが目に映るのみだ。寺院は仏教の僧侶が修行をしたり、参詣者が祈りを捧げたりする施設だから、清貧で質素な雰囲気で包まれている。

祈りの場としての寺院は、日本人にとって馴染み深い仏教施設だが、仏陀の髪や骨、歯などを納めた仏舎利塔のパゴダを、日本ではほとんど見かけることはできない。東南アジアの国ミャンマーでは、国中のいたるところにパゴダが点在している。その光景は日本人に、とてもエキゾチックな印象をもたらす。

首都ヤンゴンの市街地の北に位置するシングッダヤの丘の上には、ミャンマー国内でも随一の規模を誇るシュエダゴォン・パゴダの姿を見ることができる。敷地の中央部には、基底部の周囲を433メートルとして、高さ99.4メートルの巨大な仏塔が聳え立つ。仏塔を囲むどの位置、角度から見ても、全く同一の円錐形のフォルムを見せている。緩やかな曲線を描きながら円周を狭める塔の先には、天に昇るかのような尖塔が青空に向かってまっすぐに伸びる。仏塔を下から見上げると薄い金箔が張り詰められているかのように見えるが、実際にはビスで止めるような分厚い金の板が、外観を覆い尽くしているのだ。日中には熱帯の灼熱の陽光を浴びて、眩しく煌びやかな黄金に輝く。あまりの神々しさのため、正視することができないような輝きだ。

仏塔に使われている金箔の数は8688枚にも及ぶ。塔の最頂部には76カラットの巨大なダイヤモンドが輝き、その他にも5000個を超えるダイヤモンド、1000個を超えるルビー、ヒスイなどの宝石が鏤められている。黄金や宝石が数多く使われているが、そこに富を誇示する様子や、豪奢な空気を感じとれない。崇高で神秘的な雰囲気を漂酔わせているだけだ。善男善女の寄進によって作られた仏塔は、この国の人々の信仰の篤さを物語っている。

シュエダゴォン・パゴダの起源は、今から2500年以上の昔に遡ると言われている。紀元前585年に、タポゥタとパッリカというモン族の兄弟の商人が、インドで仏陀と出会い、8本の聖髪をもらい受け、この地に奉納したという伝説が伝わる。歴代のビルマ王は、必ずシュエダゴォン・パゴダを巡礼し、黄金の献上や、新しい建造物の造営を行った。それに伴ってパゴダの規模は年々拡大し、今では中央の仏塔は、大小合わせて60余りの仏塔に囲まれる大パゴダとなった。全ての仏塔が黄金に輝き、まばゆいばかりだ。

パゴダは礼拝の場としてだけではなく、社交の場ともなる。敷地内は毎日一日中、大勢の人で賑わっている。仏塔や仏像に向かって何時間も真剣に祈りを捧げる人、そぞろ歩きしながら微笑を浮かべて歓談する人など、周辺に暮らす人々の日常的な生活の場として機能している。日本では寺院などの宗教施設が賑わうのは初詣の時期に限られているが、シュエダゴォン・パゴダでは、毎日正月のような光景が続く。パゴダの名称の中の「シュエ」は金を意味し、「ダゴォン」はヤンゴンの旧称だ。長い歳月にわたって、ヤンゴンの人々の心の中に、黄金の輝きを燈し続けているのだ。

日中に眩しい太陽の光に輝いた仏塔は、夜間にはライトアップされる。青空から暗闇の夜空に背景を変えても、黄金の輝きが失われることはない。

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