アジアの遺跡に見る時空を超えたアート 11

日本とは異なる上座部仏教の文化を築き上げる仏教芸術

~ ミャンマー ヤンゴン シュエダゴォン・パゴダ 2~

日本人の宗教的な信仰心の希薄さが語られることがしばしばあるが、世界的に見れば紛れもない仏教国家だ。仏教の起源はインドであり、ここから近隣のアジア諸国に伝わった。伝播した経路によって仏教には、大きく分けて2つの流れがある。

チベットから中国、朝鮮、日本、ヴェトナムに伝わった大乗仏教、スリランカやタイ、ミャンマーなどの地域に伝わった南伝の上座部仏教だ。同じ仏教でありながら、習慣は大きく異なる。

上座部仏教を深く信仰するミャンマーでは、誕生日に対して独特の考え方をする。「何日に産まれたか」ということよりも、「何曜日に産まれたか」ということが重要な関心事として語られる。産まれた曜日によって、その人の性格、人生、他人との相性が決まると信じられているのだ。

ミャンマーに点在するパゴダでは、産まれた曜日によって祈りを捧げる場所が分けられている。その数は8つで、カレンダーに並ぶ7つの曜日とは異なる。何故だかわからないが、水曜日が午前と午後の2つに分けられているのだ。8つの曜日は各々、星、方位、動物によって表現される。曜日ごとの方位に築かれた祭壇の中に、曜日を表す動物が象られる。日曜日の祭壇にはガルーダ、月曜日は虎、火曜日は獅子、水曜日の午前は牙のない象、水曜日の午後は牙のある象、木曜日はモルモット、金曜日は鼠、土曜日は龍という具合だ。日本でいう干支に似た習慣が、12年周期の年ではなく8つの曜日を周期として定着しているのだ。

ミャンマーで随一の規模を誇るシュエダゴォン・パゴダにも、中央の仏塔を囲むように八曜日の祭壇が並ぶ。訪れた人は、自分の産まれた曜日の祭壇に向かって静かに祈りを捧げる。各々のゾーンでは、同じ曜日に産まれたことによるコミュニティが形成され、互いの人生を共有する連帯感が漲っているかのようだ。

曜日ごとの祭壇は、その曜日に産まれた人たち固有の空間となっているが、その周囲には夥しい数の仏像が姿を見せる。日本の寺院では木造による素朴な仏像が並ぶが、ミャンマーのパゴダに並ぶ仏像は大きく趣が異なる。黄金の仏塔の輝きに負けない色彩をもっている。黄金の袈裟を身にまとい、様々な表情をした仏像がいたるところに置かれている。視線の方向も東西南北あらゆる方角に向けられ、日々の生活を営む人間社会にも似た様子だ。顔に浮かべる表情は親しみに満ち溢れ、互いに会話をすることさえできそうだ。仏像と仏像の間に人間が入っているのを見ると、人間と仏像が一緒に生活しているかのようだ。ミャンマーでは、仏教が人々の生活に浸透していることが手にとるようにわかる。中には紫色一色で塗られた仏像まで登場する。

パゴダは仏教施設であるため、祈りの場を提供するのは当然のことであるが、仏教の説話を伝える機能ももっている。日本では絵画や彫刻がその役割を果たしており、シュエダゴォン・パゴダでは壁や天井に直接絵画が描かれているが、他にも珍しい表現を取り入れている。ヨウチュワと呼ばれる立体人形だ。平面的な絵画表現に、立体的な奥行きを付加した。1920年頃からウー・シュエダウンが、施設の壁の上部に、代表的な作品を数多く作成した。訪れた人々は視覚的に、八大勝利、カーラーマ経、マールンキヤ小経の世界に触れることができるのだ。

仏塔、祭壇、仏像、絵画などの様々な造形がパゴダを構成し、仏教世界の価値観を築き上げている。宗教観が人々の生活に浸透していくばかりでなく、生活の基礎となる文化を形成しているのだ。

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