物語.12

マンションに戻り、部屋の電気を点けると片付けられていない段ボールなどが散乱していた。

作業を夢中でしている時はかなり、作業が進んでいたと思っていたのに。

ちょっぴりだけ落胆したが、相当お腹が空いていたのか、深い部分までは落ち込まなくてすんだ。

「さて、鶏ガラから煮ちゃおうか」

「本格的だね」

「今日は博多風だからね。この方法は初めてだけど」

「旨けりゃいいって」

実は、私はそこまで料理が上手ではない。とはいえ、食べることも作ることも好きなので、食材だけは一人前にこだわってみては、様々な料理に挑戦をしている。

「まず、土鍋で鶏ガラを煮て、白濁スープ作らなきゃ」

強火でじっくり煮込まれる鶏ガラはアクも凄い。片手に発泡酒を持った勇一が熱心にアクを取り除いている間、私は野菜類を切った。

私の使っているまな板は結構イイヤツのはずだ。8000円もしたから。もう3年使っているが、全く衰えを見せないので“良い物は長持ちをする”ということを肌で感じている。

しかし、包丁は何故か100円均一で購入した、取り急ぎ的なものである。買おう、買おう、と思っているうちにこれまた2年以上使ってしまっている。何故か長持ちしているので、これはこれで不思議な感覚になってしまうのだが。

「沙織さ。本格的にするんであればさ、鶏ガラは叩いて細かくするらしいんだけど」

「そこは面倒だからやめよ。出来た頃にはお腹空きすぎて、死んでるって」

「はふ…。んぐ。そ、そうかな。ま、それで良いなら、合わせるけど」

勇一はどさくさに紛れて買った、コロッケを酒のつまみにしているらしい。

「ご飯の前なんだから、ほどほどにしてよね。私にもちょっと頂戴!」

「あ!コラ!まだ、沢山残ってるのに…」

私は勇一の手元にあったコロッケを全部奪い、一口で食べてしまった。

「ん…。これ意外に美味しくない?スーパーの惣菜もレベルが上がってて油断ならないわ」

「な。これ、本当に意外とイケるでしょ?コレ。俺、ほとんど食べてないけどな…」

私可愛い?というような笑顔で弁解してみたが、勇一は多少顔を引きつらせて視線を鍋に向けてしまった。勿論、私はそんなことは気にせず、冷蔵庫から鶏肉を取り出した。

つづく

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