アジアの遺跡に見る時空を超えたアート 12

熱帯の灼熱の太陽光を受けて黄金色に輝く正方形の仏塔

~ ラオス ヴィエンチャン タート・ルアン ~

私たちの普段の生活は、丸いものや四角いものなど、様々な形状をしたもので取り囲まれている。丸みを帯びた造形には柔らかさや暖かさを感じることができるが、安定感についてはぎこちなさを感じる。住宅建築や、家具、家電製品などは、大きさや機能に合わせて四角形が組み合わされた形状となっていることが多い。安定感や機能性を確保するためには直線で構成された四角形ということになるのだろう。

四角形には、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの種類がある。各々の形状で人が感じる感覚は変化する。この中でも、規律正しさや安定感に最も富んだ形状は正方形ということができるだろう。私たちの生活の中でも真四角の形をしたものは数多くあるが、建築物の構造に着目すると、正方形の建築物に出会うことは比較的珍しい。

ラオスの首都、ヴィエンチャンに建つ仏教寺院のタート・ルアンは真四角だ。4つの頂点からは直角に交わる2つの辺がまっすぐに伸びる。巻尺かものさしを使って正確に長さを計測して建造されたかのようだ。

タート・ルアンは1566年、14世紀から18世紀にかけてインドシナのこの地域を治めたラーンサーン朝の第18代セーターティラート王が建造したと伝わる。当時のラーンサーン朝は、度々ミャンマーからタウングー朝の侵攻を受けた。そこで王朝を守るために、首都をラオス北部の山間にあったルアンパバーンからヴィエンチャンに移したのだ。煉瓦壁をめぐらせて防備力を強化した首都を整備し、仏教寺院の建造を行った。しかし、1828年の隣国シャムの攻撃によって損傷したが、1936年に本格的な修復工事が行われ現在の姿を取り戻した。

ヴィエンチャンの市街地から東北に約3キロの小高い丘の上に、一辺約85メートルの正方形の壁が仏教寺院の輪郭をつくる。外壁の中には一辺約60メートルの正方形の仏塔が配置される。その中央には高さ45メートルの黄金の塔が、堂々と聳え建つ。幾何学的にはこれ以上ない安定感をもった構図だ。

仏塔は三段構造となっており、中央の大仏塔を夥しい数の小仏塔が二重に取り囲む。仏塔全体は黄金一色の色彩であり立体構造でありながら、平面的、絵画的な印象を与える。熱帯の灼熱の太陽の光を反射し、まばゆいばかりだ。数年おきに黄金を塗り直しているため、その煌びやかさが損なわれることはない。日本では京都の金閣寺が黄金に輝く寺院として広く知られている。大きさも構造、そして降り注ぐ太陽光も大きく異なるが、タート・ルアンの方が、金閣寺の輝き以上に、強烈な反射光を放っている。

仏塔は柔らかな曲線をもち、仏教世界で象徴的な花のはすを模っているかのようだ。煌びやかな黄金色に輝く仏塔にも、穏やかな慈しみに満ちた宗教観が宿っている。色彩だけに注目すると豪華絢爛なイメージが湧き上がるが、安定感のある構造や繊細なデザインのためか、清潔で落ち着いた雰囲気を漂わせている。

毎年、旧暦12月の満月の日を中心に、ラオス最大級の行事、タート・ルアン祭が開催される。約1週間の祭りの期間には、全国から僧侶がここに集結し、広場には夜店が軒を連ねる。寺院の中では、ラオス独特の襷掛けのパービアンや、スカートのシンマイを身に纏い、ろうそく、線香を持って仏塔のまわりをゆっくり歩く人の姿が絶えることはない。

黄金一色に塗られ、正方形の安定した構造をもつタート・ルアンは、ヴィエンチャンの人ばかりでなくラオス全国の人々のシンボルでもあり、心のよりどころでもあるのだ。

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