物語.15

朝七時半。相当な音量のブザー音が聞こえてきた。

「ちょ、一体何なの!?」

私は飛び起きて、その音を鳴らしている犯人を手探りで探した。

昨日は水炊きで盛り上がってしまい、結構お酒を飲んだ。そのためか、かなり具合がよろしくない。

「うるっさいな、もう…」

どうも、そのブザー音の犯人はソファの辺りに転がっていたiphoneようだ。

「何だ…。あ、そっか。今日、私、仕事か」急に酔いが覚めると同時に気分も落ち込んできた。店長という立場であろうが、仕事はイヤだ。現場に着いてしまえば良いのだが、支度して家の外に出るまでの一連の動きが、かなりダルい。

「んん…。あ、沙織。今日何時からだっけ?」

髪の毛が一方に全て流れてしまい、怪しい人物になってしまった勇一が聞いてきた。

「ええと、確か…八時半出勤だよ」

「そっか。昨日、起きれなかったら困ると思ってアラームかけといたんだけど…気付いた?」

「あ。勇一がしてくれたんだ。でも、私目覚し時計で起きる派だから大丈夫だよ」

一人で暮らしていた頃は、愛用していた時計の目覚まし機能を使用して朝を乗り切っていた。ディスカウントストアで購入した、ハムスター(らしき動物)のキャラ時計だった。

「でも、荷物電車に置いてきたんだろ?」

「げ…。そっか。あの目覚まし気に入ってたんだけどな」

「今頃、どっかでうるさいだろうね。まぁ、携帯で良いならそれにしなよ。結構、起きれるらしいから」

「私は起きちゃったけど…。勇一は寝てたじゃん」

「俺は仕事が10時からだから、自然に起きる派。何があっても9時過ぎに起きるから、音には反応しない」

何だそりゃ?と思いながらも、納得した振りをして私は洗面所へ向かった。

基本的に私の化粧は早い。ものの5分では終わる。20代前半は結構、高価な化粧品を使って時間をかけていたが、そういった品は肌に馴染まず荒れていく一方だった。

しかも仕事柄、あまり化粧もしたくない。そのため、ナチュラルなメイクに移行しただ。ただ、女子力低下の一途を辿っているような気がして、毎朝鏡の前で悩むのだが、周囲の人間は「沙織ちゃんはそうであってほしい」と声を掛けてくれる。

のんびりしたキャラクターからか、何故か妖精のような扱いだ。

でも、35歳を過ぎたら影で「あの人みたいになったらお終いだ」と後ろ指を指されそうで不安を感じてしまう。

まぁ考えてもしょうがないよね、と不安に蓋を閉めた後、いつものように怒濤の早さで洗顔、化粧水、乳液、の一連の行動を終え次の工程もこなしていった。

つづく

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る