物語.17

深い溜め息を何度もつきながら歩いていると、あっという間に従業員入り口の前に立っていた。

どこのショッピンセンターでも同じだと思うが、従業員証明証という物が無い場合、入り口の警備のオジさんに止められてしまう。

そのため、面倒な手間をかけないためにも、多くの従業員は入り口の5m程手前で従業員証を用意し、サッと見せたと思ったらそのままバッグにそそくさとしまう、という一連の動作を身に着けなければいけない。

無論、私だってその技術は持ち合せているのだが、今日ばかりはまだ新入りのため、それが発行されておらず、ゲスト扱いとなっている。

「あの、地下1階の佐々木の店長の名取と言います。今日は申請が出ていると思うのですが…」

「え?佐々木さんとこの?あぁ…。あの店長さん辞めたのかい。ええっと…」

守衛さんは様々なテナントから申請されたFAXと名簿を見ながら私の名を探している。ここの入り口は吹き抜けになっているのか、非常に寒い。、申請が出ていなかったら、このヒンヤリした風に当たりながら、この場所で10分以上は待たなくてはいけない。私はそれだけは回避したかった。

「あぁ、あったあった。名取沙織さん?」

「は、はい!」

「もう、いっぱい紙があって分かんなくなっちゃってね。ははは…」

はあ、と私も愛想笑いをしながらもパソコンで管理すれば手間が省けるのに、とこの管理体制の効率の悪さに疑問を持った。

「じゃ、今日はさ、コレ着けといて。ここに番号書いたら行って大丈夫だから」

「…42番」

守衛さんがゲスト用のバッチを渡してくれ、私はそこに書いてある番号などを名簿の署名欄に書き込んだ。

しかし、朝から不吉な数字でツイていない。急にイヤな気持ちにもなったが、むしろネタとして使えそうだな、と発想を変えたら急に勇一に話したくなった。

私は守衛さんに軽く会釈をした後、従業員でごった返している入り口に吸い込まれるように入り、階段で食品フロアに降りていった。

つづく

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