物語.20

この店では、煮込みおでん・揚物・生物・パック系と、ある程度の種類を販売している。

レジやまな板、書類などが置かれた台を挟み、大きなおでん鍋を正面に配置。そこからL字型に売り場が展開され、冷ケースと呼ばれる冷蔵陳列ケースと合わせて商品を並べれられるようになっていた。

以前の店よりも広くなっているものの、やりがいはありそうだ。

ちなみに、東野君が教えてくれたのだが、どうやらこの店は早朝に、池ちゃんと呼ばれる配送のオジさんがやってきて今日分の荷物を段ボールで荷下ろししていくらしいが、年末などのピーク時で無い限りスタッフの早朝出勤は無いので、1年通してほとんど池ちゃんと会うことはないらしい。

「じゃ、店長。とにかく、今朝は俺が下で“揚げ”をしてきます」

揚げというのは、練り物をフライヤーで揚げて販売する商品だ。意外にこれが看板商品だったりするので、焦がしてしまったり、半生であったしてはいけない。それなりに難しい熟練の作業である。

「了解。じゃぁ、午後に私も誰かにココのやり方をザックリ教わるわね」

「了解っす」

私はもうちょっと池ちゃんの事を知りたかったが、彼と適当に挨拶を交わし、商品を並べ出した。

段ボールは予想以上に多く、どうも無駄な発注が多いように感じたが、売り場がスカスカなのも困るのでしょうがないことかもしれない。

添加剤を入れないウチの商品は、賞味期限が短いので廃棄が増えてしまうのが難点だが、練り惣菜屋の特権として、おでん種として煮込めてしまうので、有り難かった。

「ん?これは、おでん汁のマニュアルかしら?」

おでん鍋の端辺りに黄ばんでしまった紙が貼ってある。「みりん2:つゆ8」これって…濃過ぎじゃない?私は驚愕した。

関東風で通しているのか、これでは汁は真っ黒になってしまう。しかし、この店の味である以上、お客さんや他のスタッフの断り無しで味を変更することはできない。

とはいえ、自分が美味しくないと思うものは売りたくない。

ということで悩んだ末に、今日から自分の店であることを自身に言い聞かせ、覚悟を決めて味を変化させてしまった。

つづく

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