物語.22

新しいスタッフが出勤してきた、ということはすでに時間は正午になっており、弁当を探して回る客で周囲は混雑し始めていた。

この時間帯を私達はデッド・タイムと勝手に名付けている。

「やっぱり、このお店も昼間はダメ?」

「そうですね。基本的にランチには向きませんよね。おでん」

そう、不景気のおかげで500円弁当でさえ、買い渋る方が大勢いる中、もう一品のおでんを購入する人がいるとは到底思えない。

「じゃ、俺、そろそろ上がりますんで」

「え?あ、そうね。お疲れ様」

東野君は就職活動に失敗したらしく、働かないのも困ると親に促され、ここで午前中だけ勤務をしている。そうなると、結局いつかは辞めてしまうことになり、朝番の人員確保は今のうちに、どうにかしなくておかなくてはならない。

もう、とにかく課題が山積だ。どうも、この表情を坂本さんが読み取って話しかけてきた。

「店長?大変ですよね。急に…。私、ここでもう3年勤めてるんです。わからないことがあったら、何でも聞いてくださいね」

「ごめんなさい、心配かけて。でも、売り上げ良くしないとまずいんだよね」

「え?あぁ。そうなんですけど…。やっぱ、厳しいかもしれません」

「どういうこと?」

「前の店長って、結構顧客を持っていて。この地域って、富裕層が多いじゃないですか。だから、1人のお客さんがウン万円購入しているんです」

「だって、その人達って別にお店来るでしょ?」

「それが…。その人達もこの店長じゃ無いと意味が無いって…。とにかく、グルだったんでこの会社の悪い噂を広めてやろう!って前の店長と結託しちゃってるんですよ」

よく分からないが、普通の店員とお客がここまで仲良くなるって、この地域は一体どんな場所なんだろう。こうなると、私になったから不味くなったとか、とにかく嫌がらせがきそう。

「店長。でも、負けないで頑張りましょうよ!前の人私かなり苦手だったんです。名取さんなら仲良くなれそうだし」

「ちょっと。お遊びとかじゃないのよ」

「楽しく、明るく売り上げを上げましょう!」

「そ、そうね」

何だかこういったテナントの店員さんはアクが強い。まだ、あと数人スタッフと出会うのだろうが自分にまとめられるのか。再度、大きな不安が私の心を覆っていった。

つづく

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る