物語.23

出勤初日は、書類の整理や館内の散策などをしていたことで、あっと言う間に上がる時間になった。

不景気という訳では無いのだが、残業をすると会社が嫌がるので、特別な日以外は定時に上がることにしている。

勿論、それを咎めるスタッフはこの会社にはいない。

夕方から出勤してきたのが、柴田という大学生の女性だったのだが、ごく普通の真面目な学生といった感じで、無難に仕事をこなしてくれそうな感じだったので安心した。

「じゃ、後はお願いね。レジ締めなんかは明日私が覚えるから」

「はい!ではでは、また明日!」

「お疲れ様…」

坂本さんは一体どんなテンションなのだろうか?完全に友人ノリで私を扱っている。でも、上手に利用すればラクに仕事ができるかもしれない。こういったのも店長の私の手腕にかかっているんだろうな、そんなことを考えながら、ついでに隣接しているスーパーを調査しに行ってみた。

「この地域ってこんなインフレ状態なの…?」

地域柄と有名スーパーというダブルパンチのおかげか、鮮魚、精肉共々恐ろしい価格帯で販売されている。肉にいたっては確実に0がひとつ多い。

「高いからって美味しいとは限らないし、牛肉なんてサシがビッシリで相当脂っぽそうだわ」

基本的に私は日本人の脂信仰は好きではない。テレビ番組のグルメレポートなどで“うわぁ!口の中でとろけちゃう!”などと、明日を夢見る女性タレント共が感嘆の声を上げているのだが、薄っぺらい。どう考えても溶ける肉というのは不気味だと思う。

ちゃんと、バランス良く赤みと脂の配分が無ければ美味しいとは言えないのではないか?しかも、それの方がヴィジュアルにいたっても、そちらの方が断然美しい。

お金持ちに対する僻みに聞こえるかもしれないが、幼少の頃両親に連れて行ってもらった旅館で食べた、最高級国産牛の霜降りで嘔吐してしまったトラウマもあるのかもしれない。

とはいえ、マグロも赤みの方が間違いなく上だと思っているので、ただ単に油分が苦手なのかもしれない。

まぁ、こんなことを思っていても仕方がないので、私向けの普通のスーパーによってマンションに帰宅した。

つづく

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