物語.24

その日の夕食はカキフライを作ってみた。

キャベツを千切りにしたものに、スーパーの惣菜売り場で購入したマッシュポテトを添え、1人8粒程度という、そこそこのボリュームがある1皿になった。

後は、常備している白菜の漬け物と、大根の葉のみそ汁。これといって豪勢ではないが、2人であればこのくらいで十分だ。

「私さ、やっていけるかな。なんか、変わった人ばっかだし」

勇一は発泡酒をグラスに注ぎ入れながら黙って聞いている。

「しかもさ、よく考えたらしっかり引き継ぎとかも無かったし、売り上げも上げなきゃならないし…」

「へぇ。それ、ちょっとキツいね。体壊すし、そこまでしなくてもいいでしょ。ちゃんと会社と話し合ってさ、辞めちゃえば?」

「いや。それしちゃったらお終いでしょ。負けたくないし、私なにも悪いことしてないもん」

そうだ、私は別に何も悪くない。よく考えてみたら、何故、真面目に働いている私がここに呼ばれたんだろう。もしかして、リストラ対象者として最後まで足掻かせる気なのかもしれない。そうだとしたら、いっそう腹が立ってきた。

「まぁ、ともかくやるしかなさそうって感じだね」

「うん。ちょっと荒れ狂う日があるかもしれないかも宜しくね」

勇一はちょっと笑ってテレビを付けた。お笑い芸人が自分の趣味を自慢し合っており、近頃のテレビはますますネタが無くなってきたな、と感じる。

「それにしても、やっぱりカキフライはタルタルソースだよな」

「そうそう。この酸味がたまらない。これ考えた人って本当に天才だったんだろうね」

「そうだね。でも、そんなこと言い始めたら無限に出てきちゃうよ」

「そっか。マッシュポテトとかみそ汁とか」

「そもそも米、ってネーミングが凄い」

「確かに。あ、止まんないね」

「だろ?」

私たちは今日もくだらない会話で笑い合う。正直、喧嘩したり、1人になりたい時って沢山あるけど、この瞬間が一番好きだ。大好きな人と美味しいご飯を食べながら、思いっきり笑う。これ以上の幸せがあるのだろうか?

ずっと続けば良いと思いながらも、24時間の内の何分かだからこそ喜びも大きいんだろう。

この湧き上がる幸福な感情が起こる度に、私派は一瞬だけ冷静になってこんなことを思ってしまう。

そして、今回も例外なくこの状況を体感していた。

つづく

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る