アジアの遺跡に見る時空を超えたアート 25

不婚の誓いを立てた4人姉妹が建立した四面仏像

~ ミャンマー バゴー チャイ・プーン・パゴダ ~

日本の全国各地に点在する寺院には、各々の寺院に特徴を与える仏像が安置される。巨大な大仏として、すぐに頭に浮かぶのは、「奈良の大仏さん」の愛称で親しまれる東大寺の金堂の盧舎那仏坐像だ。大仏殿の屋根の下に、崇高な姿を見せてくれる。「奈良の大仏さん」を含め、日本で見られる仏像は、一体の仏像であるため必ず表裏がある。

ところが、東南アジア地域の寺院を訪れると、表裏、左右がない仏像をしばしば見かける。4つの周囲に仏像が作られる全方位型の仏像だ。

ミャンマーの首都、ヤンゴンから北東へ80キロの位置に、モン族の古都バゴーがある。573年、モン族の2人の王子によって街が建設された。9世紀からはビルマ族最初の王朝、バガン王朝の支配を受けていた。その後の1287年に、モン族のワーレルーが、スコータイ朝の後援を受け、バガン王朝の支配をとき、バゴーを首都としてモン王朝を打ち立てた。王朝は、ハンターワディ宮を中心として約250年間にわたって栄える。

ところが、1530年には再びビルマ族のタウングー王朝によって制圧され、続く1757年に、コウバウウン朝のアウランパヤー王によってバゴーの都は壊滅してしまった。その後、バゴーはビルマの地方都市として、静かな時が流れた。

バゴーの市街地から南へ約4キロの所に、歴史と伝説に包まれたチャイ・プーン・パゴダが建立されている。「チャイ」、「プーン」は各々、モン語で「パゴダ」、「四」を意味し、パゴダの名前を日本語に置き換えると、「四面パゴダ」となる。その名の通り、境内には、東西南北の4方向を向く4体の仏像が聳え立っている。四面仏像を見慣れない日本人にとっては、謎めいた雰囲気を感じる。

チャイ・プーン・パゴダは、15世紀にモン族の4人姉妹が建造したと伝わる。そのとき姉妹は、一生結婚しないという誓いを立て、一人一人が一体ずつの仏像を建立した。万が一、誰かが結婚してしまったときには、その人が建てた仏像は壊れるよう、のろいをかけた。その万が一は現実のものとなり、一番下の妹が結婚してしまった。すると、彼女が建てた仏像は崩れてしまったという。それが西を向く仏像だ。崩壊した仏像は18世紀に、寄進者たちによって新たに作られ、それ以降は四面仏像が揃い、安定感を保っている。

高さ約30メートルの柱の4面に、巨大な4体の仏像が東西南北の方向に視線を向ける。柱を一周しながら各々の仏像にお願いをすると、ご利益も4倍になるのだろうか。女性であれば羨ましくなりそうな白い肌は、すべすべとした質感をもち、純潔感を漂わせている。大きな目の上に眉毛のラインが描かれ、くっきりとした目鼻立ちをしている。鮮やかな赤色をした口元が極めて印象的だ。仏教ならではの黄色い袈裟を纏いながらも、指先には現代感覚のネールアートが施されている。崇高な仏様というよりは、親しみに満ちた人間感覚溢れる仏像といえる。

西側以外の3体の仏像はほぼ同じような姿だが、西側の仏像だけが他のものと少し異なっている。それは建立された時代が違うためだが、かつての伝説の影響から、周囲の人には今でも壊れやすいと囁き続けられている。

熱帯の真只中に位置するバゴーは、一年を通して雨が多い。屋根もなく野晒しの状態で座る仏像は、風雨によって汚れてしまう。そのため毎年、寄進者がペンキを塗り直し、鮮やかな色彩を保ち続けている。バゴーに暮らす人々の篤い信仰心によって、4体の仏像は色褪せることなく、鮮やかな色彩で輝き続けているのだ。

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