物語.28

実は年末が、練り総菜店の一番のかき入れ時だ。

寒いからおでんを食べる、という欲求があるのも勿論なのだが、どちらかというと親戚や知人達との“自宅忘年会”といった時に使われることが多く、今日は週末という状況も手伝って、大分売り上げが良い。

今年は例年に比べ、グッと冷える日々が続くので売り上げも良く、前年比はどうにかクリアしている。

「店長!配送のお客様なんですが…」

「どうしたの?」「あの、俺。包めないんですよ。上手く」

そう、ウチの商品は全国展開をしいていないので、地方の方への贈り物としてかなりの量の配送が来る。それなのに、この男性はまったく包めないのだ。正直、そこそこイケメンなのだが、これといった特徴が無いのがポイントでちっともモテないそうだ。

「日向くん!了解。でも、ちょっとだけでもいいから練習してほしいかも…」

「あ、え、すみません」

しまった、日向君を傷つけたか?近頃の男子は本当に弱い…。どういう風に注意して良いのか全くわからない。ちなみに日向君はバンドマンらしく、24歳になって始めて上京してきたのだという。

「で、でも、頑張って声出します!」

「ちょっと、日向君!レジお願い!」

「あ、すみません!」

彼の答えも意味不明だし、何か急激に忙しいし。私はもう毎日、何が起こっているか全く分からなくなってた。

そう言えば、売り上げの日誌も今月ほとんど記入していない。この記入をためてしまうと、かなり面倒になること分かっているので、どうにか抜け出したい。

「おはようございます〜」

「坂本さん?あ、そっか。今日って来るんだったっけ?」

「ちょっと、やだな。店長が来てくれって言ってたんでしょ?」

「え?そうだっけ…」

その時、いかにも機械的に連続する電話音が聞こえた。「はい。佐々木です」しまった。今日は店長会議だったんだ…。しかも、新入り店長ということで私は自己紹介までしないといけない。

忘れているだろうと踏んだ、統轄グループの宮根さんが確認の電話を掛けてきてくれたのだ。

「ごめん!店長会議だ!宜しくね!」

もう、バタバタ過ぎて帽子の下の髪の毛もバサバサになっている。

とはいえ、脇目も振らず私は別館の会議室に走って行った。

つづく

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