物語.30

今回の店長会議の議題は特に無いようで、近くの席に座った人たちでグループを作り、適当に普段思うことを発表するというものだった。

軽く進行役の社員が音頭を取り、それをキッカケに各テナントの店長が話し合いだす。

「エレベーターが遅いわよね…」「やっぱり、夕方の客入りが弱い」「集客力がイマイチだね」

まぁ、食品テナントの人というのは割りかし年齢層が高い上に、アパレル系の人達と違って大勢の中で目立つことをダサいという感覚で生きていない。

そのため、ずけずけと激しく意見が飛び交った。

「佐々木さんとこは何かある?」

「え?私ですか…?」

「まだ来たばっかりだし、何もわからないよ」

「でも、ちょっとぐらいはあるでしょ?」

「え、えぇっと…」

こういった話し合いは苦手だ。とにかく、何故周囲の人達はここまでして私の意見を聞きたいのだろうか。そもそも、会議などで発言しないのはエリートでは無い、というのもおかしい風潮だ。だって、無かったらそれでいいじゃないか。不満を持った人達だけで集まれば問題ない。

「特に無いんですが…。でも、ちょっと色が無いかなとは思います…」

「へ?色って?」

こういう時にやたらに突っ込んでくるオッサンは必ずいる。

「駅前のショッピングセンターは駅近で、若年層向けで売っているって分かるじゃないですか。でも…、ここって年配の方や家族連れがターゲットとしておきながら、何か中途半端っていうか…」

やばい。何だかよく分からないことを言ってしまった。これでは“じゃぁ、どうするの?”と永遠に突っ込まれ続けてしまう。大失敗だ。

「な、なるほど。これは外から来た人じゃなきゃ分からないね!」

「確かに対抗したいばかりにあっちの物真似ばかりに意識していたかもね…」

何か、おかしい展開になってきた…。

「よし、うちのグループはこれを発表しよう」

「ちょ、ちょっと良いんですか?かなり漠然としてますが…」

「そんなの統轄に考えてもらうさ。俺たちは一生懸命やってるんだからな」

確かに集客力の無さを全てテナントのせいにされても困る。とはいえ、ここまでワガママな人達を抱えている統轄の社員は大変だろう。そんなこんなでグループ会議の時間は終了した。

「お疲れ様でした。では、各グループ発表御願い致します」

進行の社員がギラつく額を拭きながら全員に声を掛け、発表が始まった。

つづく

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