物語.31

他のグループでの店長会議での意見交換会で出て来る意見は、大したものでは無く、通りが狭いので荷物が運搬しづらいとか、打ち出すコンセプトが分かりづらいなどの、結構どうでも良い内容だった。

「えぇと…では、Eグループ御願い致します」

私達のグループには先程から率先してリーダーを買って出てくれるオジさんがいるので、当然、そのオジさんが直立して意見を述べた。

「うちのグループで出たんですが、実際、この食品フロア自体に色が無く、コンセプトから確実にずれてしまっている分、駅前のショッピングセンターに大負けしている気がするというものです」

何となく大き過ぎるテーマに会場がどよめいた。勿論、悪い意味で。

「えぇと…具体的にどんなとこで負けているのでしょうか?」

「それは…」

オジさんが私を見てきた。私だって、答えがあってこの意見を出した訳でもないし、適当に言っただけだ。

「あの、何か活気とか…」

「活気がありません」

「それでも、ウチのショッピングセンターは今の所前年比を超えていますし、色としても昔からご利用頂いている、いわゆる富裕層をターゲットに売っていますよ。ぶれているという感覚は…」

もう。私は新参者であるにも関わらず、結局ヤバい変なお調子者になってしまっているではないか…。早く、この話題を切替えて帰りたい。

「すみませんが、結構、新しい私から見て保守的なのか革新的なのかわかりません」

急に角度の違う意見が耳に飛び込んできた。この声と姿は、先程会話したサダハル・アカギの新城さんだ。

「新店舗としてこのデパートに入りましたが、これといって大きな宣伝も無く、混んだのは出店から3日ぐらいでした。結果的にどっちつかずな状態になっているので、テナントとしてもターゲットが狙いにくいです」

何と…。先程私と話をしていた時とはまるで別人だ。こんな大きな人間を利用しようとしていた自分が非常に恥ずかしい…。しかし、私も同じことを考えていた分、仲良くできそうだ。

「そうですね…。わかりました。また、後日こちらから回答を皆さんにお伝えいたします」

そんなこんなで、初の店長会議は針のむしろにならず済んだ。しかし、一体どのような展開になるのか。いまさら、この年の瀬に何を変化させるのか、期待と不安が入り交じる。

「どうなるんだろうね」

こんな事を言いながら各テナントの店長達は自分の城に帰還していった。

つづく

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