物語.32

家に帰ると勇一がパソコンに向かって作業をしていた。今日は勇一は休みだ。基本的に勇一の会社では土日が祝日なのだが、月に一度は有給を無理矢理使わされる、という制度があり、長期休暇を勝手に取って海外旅行!という行動を防止させているようだ。

「ただいま!」

「うーす」

気のない返事なのだが、世の中には返答してくれない彼氏や旦那がいると聞いたので、返事が返ってきただけでも愛されていると思うことにしている。

「今日はスイーツ買ってきたよ。後でコーヒー飲みながら二人で食べよ」

「お、いいね!どこの?」

勇一は作業の手を止め、私の方に近寄ってきた。

「サダハル・アカギだよ」

「マジか?ニコタマにあったの?」

「近頃できたんだよ。んで、今日さ、そこの店長さんと仲良くなったんだ」

「へぇ…こりゃ楽しみだな」

勇一はやたらに甘いものが好きなので、スイーツの情報以外、コレといって頭には入っていかない。

「ピスタチオのやつだからさ。絶対美味しいって!」

「これ、ヤバいな!即効仕事終わらすよ」

「今日はどこにも行かなかったの?」

「いや、昼間にちょっと本屋行って、ケンタッキー寄ったぐらいかな」

「え!?ケンタッキー行ったの?お土産は?」

「そんなモンないよ。だって、セット食べてきただけだからね」

「つまんないことするね、今日も」

「そいつぁ失礼いたしました…」

勇一はそのままMacの最新型デスクトップの前に戻って行った。くそ、ケンタッキー食べたかったな。まぁ、人の勝手なのだが、こう同棲し始めるとお土産を必ず買ってこなければイケナイものだと思ってしまう。

今日だって別に自分の分だけ購入してくればよかったんだが、どうもそういった事はやっちゃいけない感じてしまう。

勇一自体はお昼ご飯をそこで済ませただけなんだし、お土産なんて買う方がおかしい。私だって、昼間定食屋にいってサバの味噌煮を、もう一枚頼み、タッパーに詰めることはしないだろう。

適当に自分自身を納得させて、冷蔵庫にケーキをしまおうとした。

「あれ…」そこには、クレープ生地で巻かれたチキンとレタスと何かの食物が、ラップに巻かれていた。勇一のこういう所がたまらなく好きだ。互いに離れていても、思ってくれていると感じると愛されていると、本気で感じられる。

私はにやにやしながら、即効でレンジにその物体を放り込んだ。

つづく

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